スタッフブログ|日産スタジアム
芝生のとっておき話(2)
2003/03/25
 

   ?サッカー選手に好まれる芝生・好まれない芝生?

   みなさん、こんにちは!
   今回はサッカー選手の好む芝生についてお話をします。
   横浜国際総合競技場は、皆さんもご承知のとおり『横浜F・マリノス』のホームスタジアムです。今まではワールドカップの開催や準備等がありましたので、年間10試合程度しか行うことができませんでした。しかし今年からはリーグ戦・ナビスコカップを含めて多くの試合が開催できそうです。
   さて、よく『ホームの利』と聞くことがあると思いますが、それってなんだと思いますか?もちろん大勢の地元サポーターの応援もその一つです。その他にも試合を有利に進めるためには、選手一人ひとりが芝生の特徴を知っていることも大切な要素だといえるのではないでしょうか。

選手が最高のプレーを演出する芝生づくりへの道は永遠に続く

   サッカーは11人対11人が、いかに相手にボールを渡さずに相手ゴールにボールを入れるかというスポーツですよね。転がしたり浮かしたり、強い球だったり弱い球だったり、相手に取られないように色々と工夫しながらボールをつなぎシュートします。高い技術を持った選手がピンポイントで正確にパスをするのを観て、感心してうなずく方も少なくないと思います。しかし、同じ選手が珍プレーにでてくるような空振りをしたり、とんでもない方向に蹴ってしまうことがあるのです。それは単に選手の技術だけではなく、グラウンドの状態にも影響する場合があります。
   また、十人十色とはよく言ったもので、選手それぞれに芝生の好みがあります。同じ状態であっても、良いと言ってくれる人もいれば、残念ながら二度とプレーしたくないと思ってしまう選手もいるかもしれません。ですから全員が満足するような芝生を造ることは、とても難しいのです。そこで、すべての選手のパフォーマンスを最大限に発揮できるように日々芝生造りに力を注いでいるのです。
   ここからは芝生造りの重要な点についてお話をします。
   まず一つ目にあげられるのは、芝生の密度(芝生の芽数)とその長さです。
   横浜の芝生は国内の競技場の中でも非常に葉幅が狭く、細かい芝生を使用しています。皆さんは山下清画伯の貼り絵をご覧になったことがあるでしょうか?細かく小さくちぎった紙をいくつも張り合わせることによって、すばらしい絵に仕上げているのです。同様に芝生も細かい葉が密生することによって遠くから観た(スタンド)時によりきれいに見えるのです。

葉幅が狭く、細かい芝生は、スタンドからもきれいに見える。

   芝生の長さは競技場によって違いますが、全国的には20?30ミリ位が主流です。その中で横浜は、18ミリ?22ミリ位に刈っています。短かくする利点は、ボールの転がりがよくなり、パススピードが速くなることです。しかし、短くすることは芝生の損傷も大きくなるので、しっかりとした芝生に育っていないとなかなかできないのことなのです。
   もう一つは硬さです。定期的に硬度計で硬さを調べ、硬くなり過ぎていれば柔らかくする作業を行っています。具体的な数値としては95?97ポイントが理想的なようです。90ポイント以下になると、踏ん張りが効かなくなり芝生がめくれたり、選手がバランスを崩したりします。逆に110ポイント以上になると、選手の足に負担がかかり、90分間動くのがしんどくなったり、怪我の原因になる可能性もあります。
   Jリーグなどの大会利用日には必ず硬度を調べていますが、オープン当初は120?140ポイントでした。しかし、現在は平均して100ポイント前後を維持しています。

芝生の硬度計での調査

   どこのスタジアムの芝生を見ても変わりなくみえますが、ずいぶん違いがあることがわかったでしょうか?
   4月5日にはJリーグ2003シーズンのマリノスホーム開幕戦が行われます。ぜひ横浜国際総合競技場へマリノスの熱戦を見に来てください。そして、来場の際には競技場の芝生にも目を向けてくださいね。
   次回は、「冬芝から夏芝への切替作業」についてお話しします。