スタッフブログ|日産スタジアム
芝生のとっておき話(4)
2003/08/28
 

   ?コンサート時の芝生保護?

   みなさん、こんにちは!
   今回の芝生のとっておき話は、横浜国際総合競技場の『夏の風物詩』ミュージックコンサートのお話です。
   今年は8月23・24日にSMAP、30日・31日にサザンオールスターズの熱いステージが繰り広げられました。

コンサート設営風景

   過去に横浜国際総合競技場では、1999年8月にB'z・9月に矢沢永吉が、2002年8月には再びB'zがコンサートを行いました。(イルカやKiroro、ゆずやアルフィーが単発的に歌ったことはあります。)スタジアムとしては国内最大の収容人数(7万人)を集めるコンサートですので、大規模なステージを造るのも大変です。もっとも2日間で14万人もの人を集める国内アーチストもすごいのですが・・。
   実はこの大がかりなステージの設営によって、通常使用している観客席が使用できなくなってしまいます。ちょうど舞台裏の南側の観客席です。座席数は、15,000?20,000席にもなります。もともと横浜国際総合競技場の収容人数は7万2千人です。この入れなくなった席分をどのようにして補うかというと、競技場の命ともいうべき芝生の上にアリーナ席を設けるのです。このアリーナ席が少なからず芝生に影響を与えるのです。
   そこで登場するのが、秘密兵器の『テラプラス』です。この『テラプラス』は芝生保護材の役割があり、敷詰めてから椅子を並べることで芝生のダメージを少なくできるのです。

積まれて置かれたテラプラス
テラプラスの敷設作業

   『テラプラス』は、イギリスのウェンブリースタジアムでコンサートを行うときに芝生を保護する物として開発された資材です。17個の円形の脚で踏圧を分散するようになっており、中に5cmの空間があって、その中で芝生が生育できるように作られています。(国際特許取得)
   これによって2?3日間ならば、芝生に致命傷を負わすことなくコンサートが行えるようになったのです。

テラプラスで覆われた芝生
テラプラス内の芝生

   しかし、芝生は生き物です。テラプラスによって負荷は軽減できますが、もともとの体力がなければ、どんなことをしても枯れていってしまいます。そのためコンサート前の芝生にはストレスを与えず、伸び伸びと生育できる環境を提供しなければなりません。そして、コンサートまでにトランジッション(冬芝から夏芝への切替)作業で切り替わった夏芝(ティフトン)をしっかりしたターフに作り上げていくのです。
   この作業では、気温や天気(梅雨明け)を考慮し、刈り高の変更や肥料散布、散水等のタイミングを毎日のわずかな変化の中から見つけ出して一番良いタイミングで施してあげることが大切です。しかし、テラプラスの中は高温多湿になるので、敷設後にまで肥料の効果が残っているとヒョロヒョロともやしのように育ってしまいます。そうしないためには、テラプラスの敷設までに肥料が切れている状態にします。すなわち、この1ヶ月程の短期間で芝生をノビノビと育てる作業と、じっと我慢させて育てる作業をしなければならないのです。

ミキサー卓部分

   その上でコンサート時には、テラプラスを敷設している時間を少しでも短くし、ミキサー卓などの遮蔽物はできるだけ少なくしてもらうように主催者側に交渉も行います。あとは天気が安定してくれ、芝生たちががんばって耐え抜いてくれることを祈るだけです。

テラプラス撤去後の芝生

   もちろんコンサート前の期間中もJリーグをはじめとする芝生の利用もあり、良好な芝生は求められ続けています。芝生にとってもグリーンキーパーにとっても、1年のうちでこの1ケ月が正念場です。
   楽しいコンサートの下では、このようなストーリーが繰り広げられています。コンサートで競技場に来られた方には見えない芝生ですが、そんなところも気にしていただけるとうれしいです。

コンサート直前
コンサート直後