スタッフブログ|日産スタジアム
真夏の夜の夢「コンサート」
2006/04/03
 

   ?徹夜の設営・撤収 熱きコンサートの舞台裏?

   みなさん、こんにちは!
   今回の「スタジアムここだけの話」は、日本最大級の7万人スタジアムコンサートの舞台裏をほんの少しだけご紹介します。
   2005年は7月23・24日「ゆず」のコンサートが和やかにそして感動的に開催され、8月6・7日「SMAP」は華麗でダイナミックなステージが繰り広げられました。それぞれ12万人、14万人の熱いファンの皆様のご来場をいただき、誠にありがとうございました。
   さて、これらコンサートの現場準備は長いもので、本番日に先立つこと6日前、そして短いものでも4日前から開始されます。

ステージの設営
足場板の敷設

   ステージ・照明タワー(ピンタワー)、音響卓、照明卓等の設営に関わるトレーラー・クレーン車・フォークリフトが移動できるよう、フィールドトラック部分に足場板(木製)を敷設します。この養生作業が終わり次第、初めてすべての設営作業が始まります。
   ステージ部材は年々軽量化が図られ、素材自体は軽く、かつ丈夫なものに変化してきています。スピーカー関係にしても10年前とは比較にならないほど小型化され、よりクリアーで深みのある音を供給できる高性能なものに変わっています。一方、演出で要求される照明、映像装置、LED等は逆に複雑で大掛かりになる傾向にあり、それらを支える骨組みも大型化し、ステージ全体では200トンに及ぶものまで出現しています。

ステージの設営2

   フィールド芝生エリアは芝生を保護する「テラプラス」という保護資材で覆います。「テラプラス」に関しましては「ここだけの話Vol.7」にて詳しくご紹介しておりますので、ご参照ください。

テラプラスの敷設

   そして設営最後の作業としてテラプラス上にアリーナパイプ椅子を並べ、席番を貼付し、席ブロックを分割するバリケード・案内看板の設置、ローピングを行います。
これらの作業はコンサート本部、舞台製作チーム、音響、電気、演出進行、特殊効果、テラプラス・椅子設置部隊等、延べ1,000名を越すスタッフが出入りし、スケジュールの進行によっては、夜を徹しての徹夜作業となります。

設営完了

   集中した、厳しいスケジュール下のスタッフリフレッシュはひと時の睡眠と食事とオアシスの水ならぬ氷です。真夏の日中は長時間の作業を避けることや、熱中症にならないよう、十分に水分を補給する等の対策は立てているにしても、やはり夏です。本番に近づくにつれてスタッフの疲れは急激に増大していきます。

メインスタッフの朝食
オアシスの氷

【シュート・ゲネプロ・音作り】
   シュートとは、業界用語のひとつですが、照明さんが一つ一つのライトを演出に従い、それぞれのポイントに向けて当てることですが、このごろはコンピュータ制御によるシステマチックな装置が増え、システムエンジニアのような作業も増加して、本番前夜は照明シュートということで、未明まで十分な時間をかけて調整を行なっています。
   また、ゲネプロは舞台・音楽関係では良く耳にする言葉ですが、本番に近い衣装、本番通りの進行で行われるリハーサルのことで、実際にはスケジュールの関係から、実施したり、しなかったりすることがあります。ゲネプロがある時は、アルバイトスタッフの数少ない役得として、暗いアリーナエリアの後方隅の方ではありますが、アーチストの声に聞き入っている姿がチラホラ見受けられます。

本番のアリーナ席

   この頃驚かされることのひとつに、綿密な音場コントロールの技術があります。これは、コンピュータ上で会場における解析・音作りを綿密に行い、シュミレーションして現場に臨み、例えばどこのスピーカーをどの角度で設置すると何メートル先のどの席で、どれくらいの音圧で何ヘルツ帯の音が分布するのか操作することができるというのです。これは、アーチスト・音作りスタッフが作るイメージどおりの音を会場のどの場所にいても同じような音量・音質で伝えることができ、どこにいる観客も同じレベルでコンサートを楽しむことが可能であると同時に、会場外に漏れる音を極めて少なくなるようセッティングができるということであり、コンサートに訪れた観客、スタジアム周辺の住民の方々、どちらにとっても非常に望ましい状況がこの大きな会場でも作り出せるということなのです。事実、彼らのコンサートは7万人の観客が歓声をあげる中、クリアで厚みのあるサウンドを響かせ、かつ周辺からの苦情も最小限に押さえたという実績を作り出しました。まだまだ、全てのアーチスト・音作りスタッフがこのような思想と技術を持ち合わせているわけではありませんが、地域の住民の方々に受け入れられるような形でコンサートを開催したいと強く願っている当スタジアムにとっては、このようなアーチスト・音作りスタッフが増えてくれることを切望しています。

【ラジオ体操】
   「ゆず」のコンサートでは、アーチスト・スタッフの声がけにより、何年振りかのラジオ体操を4日間ほどさせていただきました。その結果、なんと、筋肉痛が出てしまいました。彼らは本番当日も観客を巻き込み、6万人×2日間のラジオ体操を実施しましたが、これは快挙です、ギネスものです。

スタッフラジオ体操

【圧倒的なゴミ量】
   スタジアムで処理したゴミ量は「ゆず」25トン、「SMAP」28トン、2004年に開催された「ロックオデッセイ」はなんと68トン。約60?程度収納できるゴミ収納・搬送用コンテナに換算すると400?1,100杯分となり、横浜市民が1人1日あたり出す家庭ゴミ量483gと比較すると、圧倒的な量であることがおわかりいただけると思います。

【最後の大仕事・撤収】
   白熱したエンディングの後、感動にひたる人、放心する人、泣いている人、笑っている人、怒っている人・・・。観客の全てがスタジアムから姿を消した後、スタッフには最後の大仕事が待っています。設営物のバラシと撤収です。こちらは、間違いなく徹夜仕事となりますが、コンサート終了後22時頃から翌日、日が暮れるまで一気呵成に片付けます。スタッフの疲労がピークを迎える時期に当たりますので、毎回、皆さんが最後まで怪我のないようにと強く願う時期でもあります。

撤収

   バラシと平行し、太陽の光のもとで行う大切な作業があります。これはフィールド上(ピッチ・トラック)への設営・撤収の結果発生するクギ等の金属物、木片、プラスチック片等を回収する作業です。ご存知の通り、ピッチの上はプロチームを中心とするプレイヤーが走り回るプレイゾーンで、万が一、危険な物が芝上に残った場合、大きな事故になりかねません。そのため、スタッフは一列横隊になり、危険物をもれなく回収するため、疲れて血走った目を皿のようにしてフィールドを確認してゆきます。

一列横隊危険物収集隊

   明け方から昼にかけて、威容を誇ったメインステージのバラシが完了し、最後の搬出トレーラートラックが出て行くと、スタジアムは何日か振りの静けさを取り戻します。昨夜まで現出していた巨大なステージ・設営物、何十台のトレーラー、数百人のスタッフが、まるでひと時の「真夏の夜の夢」のごとく消え去っていくのです。夕暮れのフィールドにたたずむ時、不思議な喪失感にとらわれる時間です。
    かくして、「戦い終わって、日が暮れて」最後に残ったスタッフ同士が健闘を称え合い、次回の再会を約します。「次回もまた頑張ります!」

「またあおう」のメッセージ