みなさん、こんにちは。
「芝生観察日記」の第七話です。
6月1日、今年も梅雨がやってきました。雨模様の蒸し暑い日が続き不快に感じる人もいる約1ヶ月半。実は芝生にとっては有難くない季節です。
梅雨は日照不足と水分過多によって病気や害虫による被害を受け易い季節です。しかし、いざ病気や害虫による被害を受けても連日雨が降っていては、殺菌剤や殺虫剤といった薬剤散布による対処ができず、被害を拡大させてしまいます。ただでも、スタンドの屋根による日照不足や人工地盤といった構造的な影響もある日産スタジアムの芝生にとっては、なおさらストレスが大きくなる季節です。
そこで、我々は梅雨の蒸し暑い天気や病虫害にも強い芝生を作ることで、これらのストレスに対する抵抗力を備えさせようと芝生を育てています。強い芝生とは、根が長く、そして太くて密度が多いことが必要とされ、根さえしっかりしていれば多少のストレスも乗り越えられるのです。
サッチ層
上の写真は、同じ地点の根の状態を、4月末(写真1)に採取したのと5月末(写真2)に採取したものを比較した状況です。単純に写真からだけでは善し悪しを説明しづらいのですが、写真2の方が根の密度が太く、量も増えています。更に、写真1よりも写真2の方がサッチ層と呼ばれる砂に根茎や葉の腐敗したものが堆積して作られた層の厚みが薄くなっています。この層が薄くなることによって降雨時の排水性が向上します。芝生を支える土壌部分は、適度な水分が必要ですが、常に水浸しの状態では根が伸びようと努力をしなくなってしまうので、必要以上の水分はしっかりと排水されるように管理しなければなりません。
そして、梅雨が明けて暑い夏を乗り切るためにも、根とサッチ層を適度な状態に維持することがこれからの大事な管理課題となります。
さて、前回冬芝から夏芝への切替わり状況について報告しましたが、4月末には冬芝が9に対して夏芝が1というような状況でした。それから1ヶ月が経過し、現状は冬芝7に対して夏芝が3といった状況でしょうか?目標の6対4には残念ながら到達しませんでした。その要因としては、5月の気温の寒暖差が大きかったことが考えられます。そして、昨年より20日早い梅雨入りで今後の切り替えが更に厳しくなりましたが、6月末には何とかして5対5まで持っていきたいと思います。
今後の途中経過は、また随時報告していきますので、次回もお楽しみに!!。
前回の芝生観察日記(6)はこちらをご覧下さい