スタッフブログ|日産スタジアム
芝生観察日記 第48話
2012/12/21
 

芝生観察日記の第四十八話です。
平成24年12月20日(木)


久しぶりの観察日記となりました。
前回から既に3か月が経過してしまいました。この間、作業的にはバーチカルカットや冬芝の追い播き(ウインターオーバーシード)、その後の養生管理など綴りたいネタは盛沢山でしたが、なかなか日記を作成するに至らず怠けてしまいました。これだけ空いてしまうと日記とは言い難い気もしますね。


さて、過日68,275人の観客が魅了されたクラブワールドカップジャパン2012が開催され、南米代表のSCコリンチャンスの優勝で幕を閉じました。
3万人とも言われる熱狂的なコリンチャンスのサポーターの応援でスタジアムの雰囲気は、とても中立国での開催とは思えない最高の盛り上がりでした。本場を感じる素晴らしい経験ができました。
 

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ワールドカップ決勝戦会場の芝生。FIFAを始め、出場するチームからも敬意を払われています。この事は大変名誉なことですが、その分プレッシャーも半端ではありません。
 

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2002年のワールドカップは、6月の開催ということで、冬芝から夏芝へ生育が移行する期間であることと、梅雨時季であるという管理上の課題はありましたが、基本的には芝生の生育最盛期だったので、セレモニー等による傷みの心配はあったものの、サッカー自体による傷みは回復が期待できました。しかし、このクラブワールドカップはJリーグのシーズンが終わり、冬に入ってベースである夏芝が休眠しており、冬芝も種を播いて2か月半という非常に繊細で、慎重を要する時期なので、期待に見合った状態を提供するために我々グリーンキーパーも管理には大変気を遣います。


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特に今年は、実質秋がなかったような季節感で、いきなり冬に突入した気象条件の中、夏芝と冬芝の2種類を使って常緑を維持している日産スタジアムでは、今年の秋はダラダラと気温の高い日が続き、いつになっても夏芝が休眠しなかったため、9月に播いた冬芝の種がなかなか生育せず、逆に夏芝が11月末でも緑に色づいている状態でした。この2種類の芝の生存競争が、不順な天候のため我々の想定通りにいかず、クラブ世界一を決める舞台造りに四苦八苦しました。


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上空からの空撮。そしてスタジアム内に張り巡らせられたワイヤーで移動するスパイダーカムによる頭上からの映像。スタジアムに来場された皆さんはもとより、映像を見て「あれっ」と感じられた方も多いのではないでしょうか。
写真では判り難いのですが、緑の芝生の間に見える茶色い部分は、芝が枯れているのではないのです。芝生のコンディションは、12月という季節と今年の天候を考慮すると上出来でした。でも、11月末まで緑色だった夏芝も大会期間中、急激に気温が低下して、氷点下が続いた準決勝から決勝戦の頃に夏芝はすっかり休眠に入り、一気に茶色く退色してしまいました。
冬芝の濃い緑色に茶色い夏芝が霜降りの斑模様になって醜い状態でした。
芝生は生きものです。こればかりは我々の力ではどうにもできませんでした。ちなみに今年は、この大会を想定して冬芝の播種量を例年よりも1平方メートルあたり10g多く播き、最善は尽くしたのですが結果として見映えが良くなく不本意でした。
今年は、昨年よりも1試合多く、4試合の他に8回の公式練習が行われました。芝生はゴール前を中心に局所的に傷みました。試合に影響が出るほどではありませんが、映像に映る剥げたゴール前は我々的に納得がいかないので、試合の合間を縫って適宜張替えを行いました。厳冬の中、連日、早朝から夜遅くまで作業してくれたメンテナンススタッフには感謝の気持ちでいっぱいです。


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決勝戦の後、最後のスタッフミーティングでFIFAのジェネラルコーディネーター(大会運営の総責任者:通称GC)から『素晴らしいコンディションを提供してくれてありがとう。』
この言葉に励まされ、達成感と共に心身が癒されて日本での最後になるかもしれないクラブワールドカップが終了しました。