芝生観察日記 第130話

芝生観察日記の第百三十話です。

令和四年11月2日(水)

 10月29日、我らがF・マリノスの今季ホーム最終戦となる浦和レッズとの試合が行われました。

 当日は快晴の空の下、優勝の瞬間をスタジアムで見届けようと46,387名のサポーターの皆さまにご来場いただきました。

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 7月以降、思うようにピッチコンディションが整わずチームをサポートできない歯痒さを感じる日々でした。

 前回お伝えしたように今年は、5年に一度受けなければならない日本陸連の公認検定に向けた工事の関係で、冬の間は芝生の作業ができないため、通例となっている冬芝のオーバーシードを行っていません。そのため、現在も厳しい管理が強いられています。

 しかし、この日の試合が今年最後の利用となるので、キーパーチームとして可能な限りの手を尽くしました。

1122.jpg 何より、オーバーシードを行っていないため夏芝のティフトンがむき出しの状況であり、日々気温が低下する中でいつ退色してしまうか分からなかったので保温のため全面にシートを掛けました。不織布とワリフという2種類を重ねることによって表面温度が数度上がることが期待できます。この時季としては珍しい作業です。

1123.jpg1124.jpg    16日天皇杯終了後       →      天皇杯翌日

 そして、8日のガンバ戦、12日の磐田戦、16日の天皇杯決勝と試合が立て続けに行われた結果、両方のゴール前は激しく傷んでしまったため、天皇杯終了後に速やかに張替えを行いました。更に、ピッチ全面に残る細かい傷はホールカップを使い1か所ずつ補修を行いました。その数、実に1,000か所に迫ります。

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 人間だったら肥満が気になるくらい肥料もタップリと施し、29日に備えました。

1136.jpg そして迎えた決戦の日。シートで保温されたティフトンは、期待通り密度と緑度を増し、日照時間が少ない場所以外は、何とか景観的には格好がつきました。

1137.jpg 写真は、29日のハーフタイムに撮ったもので、最も日照時間が少ない南側(メインスタンド アウェイ側)の状況です。既に1日3時間ほどしか陽が当たらず、まともに光合成すらできないティフトンは緑度を失い、根も下りていない厳しい状況です。そのため、天皇杯の日にも起こりましたが、選手がコーナーキックの際に踏み込んだ部分の芝生が捲れ、試合中に審判から手直しを指示される異例の事態がピッチの端の方で起きていました。長いこと管理させていただいていますが、あまりこういうケースは記憶にありません。

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 写真は試合後の状況です。また逆戻りした感じですが、試合は4対1でF・マリノスが3点差を付けて大勝してくれたので気持ちは救われました。残念ながら優勝は最終節に持ち越しとなりましたが、各方面から29日の試合までに芝生を何とか。。。と、懇願されていたので、決してベストな状態ではありませんが、少しはお役に立てたかなと安堵しています。

 これで今年の利用は全て終了し、来春の陸上公認検定に向けた工事が急ピッチで進んでいきます。

 今後は、初めてオーバーシードをしない状態で来春のJリーグ開幕を迎えなくてはならないため、新たなチャレンジが必要になりそうです。その過程を、工事の合間でまた報告していきます。