芝生観察日記の第九十三話です。
令和元年12月27日(木)
<~ Road to 2019&2020 ~>
まずは、横浜F・マリノスの選手、関係者、そしてサポーターの皆さま優勝おめでとうございます。
ラグビーワールドカップの決勝戦が終わって間もなく、優勝争いでトップを走っていた我らがF・マリノスのポステコグルー監督が大事な決戦の場となるピッチの視察に訪れました。
ピッチの感触を確かめながら数歩歩いて立ち止まり、こちらを見る表情が一瞬曇り、語り始めました。「状況は理解している(ラグビーワールドカップが終わったばかり)。だが、ベストを尽くして欲しい。そして、硬さが気になるので何とかして欲しい。」これだけでした。
我々もこの後に控える試合の重要性を十分認識はしていましたが、その場で出る言葉は「ベストを尽くします。できることはやります。」これだけです。
正直、この時点でピッチ状態は決して満足いくものではありませんでした。監督の見立てもそうだったのでしょう。
しかし、次の試合まで限られた時間は1か月足らず。ベストを尽くすしかありません。
8月3日のJリーグ第21節、マリノスは連勝中だったもののエスパルスに0対1で負けてしまい、連勝が2で止まってしまいました。この試合のピッチコンディションは今年の長梅雨の影響で思わしくありませんでした。当然、試合後のコメントで負けた理由の一つにピッチコンディションがありました。
我々も歯痒く、悔しい思いでしたが、天候ばかりはどうしようもありません。少なからずホームスタジアムとしてチームにアドバンテージとなる状況ではなかったので申し訳ない思いはありました。
決戦に向けて取り組んだこと、それはワールドカップで擦り減ったライグラスを復活させることと、硬いという状況を改善する作業に焦点を絞りました。陽が短くなり、気温も低下してきたため芝生の根からではなく、葉からも吸収できる液体肥料を定期的に散布する他、シートを掛けて保温し、ライグラスの活性を上げました。また、バーチドレンを掛けて指摘された硬さの調整を図りました。
結果、試合当日の様子はこんな感じでした。当日の来場者数はJリーグ記録となる63,854人でした。テレビ中継も地上波、ピッチ上空にはJリーグでは珍しいスパイダーカムが設置され、この試合の注目度が覗えました。
試合はご存知の通り、F・マリノスが今年の勢いがそのまま出た試合となり、3対0で圧勝しました。
ベストは尽くしましたが、当日のピッチコンディションは理想にはほど遠い状態でした。それでも、この試合はF・マリノスが目指すサッカースタイルに適応できたのではないでしょうか。
今年一年、色々ありましたが、トリパラ全開のホーム側スタンドを見てジーンときました。
昨年ハイブリッド芝に張り替えて2シーズン目となる今年は、ラグビーワールドカップを控えて試行錯誤の管理に加えて、天候不良にも悩まされて厳しい管理を余儀なくされました。
改めて、「芝生は生きもの」という教訓になった一方、人工物が混在することの難しさを知りました。来年には東京2020オリンピックのサッカー会場として、新たなチャレンジが控えています。
今年の教訓を糧に新たな気持ちで臨みたいと思います。
来年もよろしくお願い致します。良いお年をお迎えください。