芝生観察日記の第六十九話です。
平成27年12月10日(木)
8ヶ月ぶりの更新となりました。
慌しく、そして粛々と今年のJリーグは幕を閉じ、残念ながら我らがF・マリノスは総合7位という結果に終わりました。揃って年末に横浜アリーナで開催されるJリーグアウォーズでW受賞という夢は今年も叶いませんでした。
もっとも今年のJリーグアウォーズは、どうやら東京で開催されるそうです。横浜尽くしの年末は来年の楽しみとして持ち越しましょう。
さて、日産スタジアムでは今日から3年ぶりに日本で開催される「FIFAクラブワールドカップジャパン2015」が開幕します。
今朝の最低気温は2.8℃。綺麗な陽光がスタジアムに差し込みましたが、予想通りの冷え込みとなり、昨夜の公式練習後に設置した保温用のシートが効果を発揮しました。大事な試合の前に霜にあたってしまうと暖地型の芝生の退色が進んでしまいフィールドの緑度が低下するので大変ですが、毎日シートの設置、撤去を繰り返します。
この大会期間中は、いつも夜が遅く、朝が早いため芝生管理スタッフには苦労を掛けますが、世界が注目する大会なので気が抜けません。スタッフの皆さんには感謝です。
会場の準備も着々と進んでいます。FIFAのバナーを見るといつもとは違った緊張感に包まれます。FIFAの大会では、GC(ゼネラルコーディネーター)という役職の人が試合会場の全てをマネージメントします。Jリーグなどではマッチコミッショナーと呼ばれるポジションです。
GCは、試合会場全ての決定権を担います。そのため、チェックも細かく、広くにわたります。
上の写真は、ゴールの高さをメジャーで実測している状況です。なかなかJリーグでは見ない光景です。また、もう一枚の写真は、ゴールの立て直しチェックの状況です。
FIFAの大会では、必ず試合で使用しているゴールの他に、例えば試合中にゴールが倒れたり、ネットが切れるといったアクシデントが起きた場合に、直ぐにゴールを立て直して試合を再開させられるように準備しています。そして、実際に何分でゴールを交換できるのかというシュミレーションチェックを受けている状況です。今回は15分21秒で完了し、GCから「Verygood」の評価をいただきました。これもJリーグでは考えられないことですが、世界一を決める大会ですから何が起きるか判りません。実際に2005年の本大会においてサポーターが乱入してゴールネットを吊るサブポールが曲がってしまい、試合中にゴールを交換するという事態を経験しています。リアルに体験しているので戸惑うことなく対応できました。
そして、今朝は12月の試合としては初めて早朝散水を行いました。この時季の散水は凍結する恐れがあったりするので我々の判断では行うことはありません。ここでも、GCの権威が威力を発揮します。昨夜の公式練習前にミーティングを行い、FIFAのマニュアルでは、試合当日の散水時間を6時間前、3時間前、2時間前、1時間前、30分前の5回と決められているというのですが、これは日本の気候や試合当日の慌しいスケジュール感では現実的ではありません。交渉の結果、早朝と試合1時間前で決着しました。
これまでFIFAの大会で4人のGCと仕事をしてきましたが、今回のTomは手強そうです。大会は20日まで続きます。来週にはバルセロナFCも登場します。緊張感と共に刺激的な10日間が始まります。試合後の結果は追って報告します。