芝生観察日記の第八十三話です。
平成30年9月23日(日)
<~ Road to 2019&2020 ~>
9月18日(火)、今年も秋から春に向けた利用への準備として冬芝の種をオーバーシードしました。ハイブリッド芝に張り替えて初となる重要な作業であるとともに、来年のラグビーワールドカップに向けて多くの試験的要素を兼ねた作業です。とはいえ、作業の流れは大きく変わりません。
まずは、播いた冬芝の種が発芽し易い環境にするためサッチングリールを使って夏芝の密度を梳いて、種が地面に接するようにします。この時、通常はバーチカルモアを使うことが多いいのですが、ハイブリッド芝に代わったことでバーチカルカットを始め、いくつかの作業に制限があるため今回はサッチングリールを使うこととしました。
何となく芝生に隙間があるのが判りますか。種の大きさはわずか数ミリなので、これだけ隙間があれば十分です。しかし、冬芝の生育を考えると本来ならもう少しスッキリと梳きたいのが本音です。と言うのも、温暖化の影響か、最近は10月中旬、時には10月末でも30℃近くまで気温が上がることが多々あり、暖地型芝の休眠が遅れる傾向にあります。そのため、オーバーシード後に暖地型芝の勢いが鈍らず、発芽した冬芝の生育を抑制してしまうことがあります。また、オーバーシード後の養生期間が2週間程度しか確保できないため、あまり暖地型芝を梳き過ぎて、傷めてしまうリスクにも配慮する必要があります。このような点を考慮して慎重に作業を計画的に進めます。
今回のサッチング掛けは、地表面から5mm上げた設定としました。
そして、スピードシーダーを使ってオーバーシードを行います。これは毎年の定番です。播種する種は今年もペレニアルライグラスです。播種量も㎡辺り30gと、これも例年通りです。
来月、10月27日(土)には、来年のワールドカップに向けたテストマッチとして、ニュージーランド代表vsオーストラリア代表という前回大会の決勝戦で対戦した両国による「キヤノン ブレディスローカップ2018」が開催されるため、播種量をやや多めに播きたかったという想いもありますが、今年張替えたばかりのハイブリッド芝の負担を考慮して例年通りの播種量に落ち着きました。
そして、播種から5日経過した今日の状況です。2日前に発根を確認し、昨日発芽したと思ったら既に2cm程度に達しました。ツンツンと上に伸びた針のようなライグラスの幼少芽が判りますか。
スポーツの秋、なかなか理解され辛い冬芝の養生期間。でも一年の内で最も大事な期間なのです。
来週には陸上の全国統一かけっこチャレンジ2018を経て、本格的にスポーツターフとして使用するのは、10月5日(金)のJリーグ(横浜F・マリノス対コンサドーレ札幌)となります。理想は、一つの種から3葉が出た状態であればベストなのですが。。。
ようやく芽生えた冬芝の赤ちゃんを丈夫で元気な子に育てていきます。成人するのは来春です。
また、生育過程を報告します。