芝生観察日記の第八十五話です。
平成30年12月6日(木)
<~ Road to 2019&2020 ~>
12月1日(土)、平成30年度、そして平成最後となるF・マリノスのホーム最終戦、セレッソ大阪戦が行われました。残念ながら試合の方は1対2で逆転負けを喫してしまいましたが、シーズン後半は常につきまとっていたJ2降格の危機を脱することができ我々も安堵しました。
そしてハイブリッド芝へ張替えて8試合目(ルヴァンカップ含む)となる芝生の状態は、10月27日のラグビーブレディスローカップは台風24号の影響による塩害でライグラスが枯れてしまい、厳しい状態でした。それから約1ヶ月が経過し、ライグラスの追い播きが功を奏して完璧ではありませんが、今年の天候等を加味するとここまで良く持ち直したなというところまで持ち直しました。
10月27日 ブレディスローカップ
12月1日 セレッソ大阪戦
※光の加減もありますが、1ヶ月が経過して追い播きによりゼブラ模様が鮮やかになりました。
この試合をもって今年最後のフィールド利用が終わり、スタジアムでは陸上の1種公認を受けるための改修工事や来年に迫ったラグビーワールドカップに向けた施設改修工事が始まります。
今年は、20年ぶりにスタジアムの芝生をハイブリッド芝に全面張り替える大工事が行われ、最高の状態でラグビーワールドカップを迎えられるように試行錯誤の日々が続いています。
10月27日(土)、ラグビーワールドカップのプレ大会として開催された「ブレディスローカップ」では、世界最高峰の試合でハイブリッド化された芝生が傷だらけになり、芝片が飛び散る光景が全国、そして世界中に配信されました。
慣れないハイブリッド芝の管理、新種のセレブレーションという芝生、連日の猛暑、毎週のように発生して上陸する台風、その影響による塩害、次々に発生する病害、これまであまり経験したことがない事態が続き、一年後の本大会を見据えると目標設定の見直しが急務であると認識しました。
我々の中では、世界で初めて採用されたハイブリッドシステムの芝生をどう管理していくのか、来年に向けた課題抽出の場として捉えていたので傷ができる事もある程度想定内でした。しかし、これまで20年間管理してきたティフトン419からセレブレーションに変更したことで、想っていた以上に芝種の違いによる管理方法の差異を感じました。この違いに慣れるには少し時間が必要かもしれません。我々も楽観視している訳ではありませんが、テレビの映像や実際スタジアムで試合を観戦された方の中には芝生は大丈夫なのかと心配されている方も多くいるようです。
でも大丈夫。心配はいりませんと言えないのが歯がゆい状況ですが、少しずつ前進しています。
10月27日のブレディスローカップ時の損傷状況
12月1日のJリーグ時の損傷状況
※追い播きしたライグラスも根付き、ブレディスローカップの時より傷が小さくなりました。
我々も長いことスポーツターフを管理してきましたが、ラグビーワールドカップ決勝戦会場の芝生を整えるということは、大変名誉なことですが、技術的には最も難度が高いと感じています。
特に悩ましいのは、1試合、2試合ならまだしも、プール戦4試合の後に準決勝2試合、その後に最も良い状態で決勝戦の舞台を整えなければならないというタイトなスケジュールであること。更に、来年ワールドカップが開幕する9月から11月という季節は、日産スタジアムで採用されている暖地型芝(セレブレーション)の生育が下降期に入ります。また、サッカーではワールドカップやクラブワールドカップを経験させてもらい、国際サッカー連盟(FIFA)と仕事をする中で世界のスタンダードを理解し、共有することができましたが、最高峰のラグビーで求められる芝生のスタンダードが未知数であり、今現在ワールドラグビーと共有できていないことが懸念材料です。きっと彼らも懸念していることでしょう。。。
と言っても大会まで残り10ヶ月しかないので、のんびりはしていられません。ワールドラグビーとしっかりコミュニケーションを取り、求められるスタンダードクオリティーを共有していきたいと思います。
年明けには芝生のワーキングチームが立ち上がる予定で、本格的にワールドカップに向けた芝生作りが始まります。