芝生観察日記 第88話

芝生観察日記の第八十八話です。

令和元年6月5日(水)

<~ Road to 2019&2020 ~>

 

 令和になって初めての芝生観察日記となります。

 

 日産スタジアムは5月26日のJリーグ翌日から4週間の芝生養生期間として、今秋開催されるラグビーワールドカップに向けた芝生作りのためにF・マリノスさんを始め、多くの関係者の理解と協力によって特殊な作業を行っています。

 

 昨年ハイブリッド芝に張替えを行い、テストマッチと位置付けられて10月27日に開催されたブレディスローカップ時の芝生の状態が、ラグビーの統括団体であるワ-ルドラグビーに大きな懸念を抱かせてしまい、以前の観察日記でも記したように今年1月より組織委員会、横浜市、日産スタジアムに国内外のコンサルティングチームを加えたワーキングチームを結成し、定期的に検討会を開催しています。

 

 主題は、ワールドカップに向けた芝生の改善策の検討です。

 

 そのワーキングの中で必須作業として決定したリノベーションを5月27日、28日に2日間かけてフィールド全面に実施しました。既に1週間が経過してしまいましたが、その時の様子を報告します。

 

 過去20年間、ハイブリッド芝に変更するまではリノベーションという言葉はブログや観察日記で登場したことはないと思います。

 

 リノベーションという言葉自体は、ビルやマンションなどの改修等で使われるため皆さんも馴染みがあるのではありませんか。

 

 しかし、芝生の管理作業においては、大規模な改修時に芝生を剥がす際に一部で使うことがあるようですが、通常の管理作業で聞いたことはありません。恐らくハイブリッド芝特有の言葉でしょう。

 

 そのため、私たちも今回が初めての経験となり、機械の設定から仕上がり面の共有までワーキングメンバーの中でも色々な意見があり、全員の意見がまとまるまで中々作業が進展しませんでした。

 

 特にワールドラグビーの意を受けた外国のコンサルチームと考え方を共有するのは至難の業でした。

作業中.jpg

刃.jpg 回転刃

 

 上の写真がリノベーション作業風景です。KOROフィールドトップメーカー(通称:FTM)を使用して行います。厚さ5㍉の刃が20㍉(刃と刃の間隔は15㍉)2列付いたリール式の回転刃が高速で回転して、芝生の表層7㍉の深さまで筋状に芝生を削り取るイメージです。削り取った芝生は右側に接続されているベルトコンベヤーにて並走するトラック吐き出して回収していきます。

実施前.jpgリノベーション実施後.jpg

 

 写真はリノベーション実施前と実施後の比較ですが、同じように作業を行っても芝生の状態によって筋の付き方や削り取られる芝生の割合が変わります。ちなみに今回の設定は、25%切除でしたが、外国チームからは50%での切除を要求されました。ちなみに50%だとこんな感じになります。

50%.jpg 

 しかし、これから梅雨入りして日照時間が減り、湿度の増加と多雨という芝生にとっては難しい季節を迎える日本で、4週間では芝生が回復しないという私たちの経験値や環境を説明して理解を得ました。 

 

 既に作業から1週間が経過しました。残る養生期間は3週間ですが、梅雨入りの声も聞かれるようになり、しびれる日々が続いています。

 

 6月22日には、Jリーグが控えています。好調を維持しているF・マリノスの選手達に迷惑は掛けられません。最善を尽くして回復を目指します。

 

 また、途中経過をご報告します。