芝生観察日記の第八十九話です。
令和元年6月25日(火)
<~ Road to 2019&2020 ~>
初めてのリノベーションから4週間が経過し、22日(土)にはJリーグが開催されました。
このJリーグに影響しないように設定したリノベーションは、芝生密度を25%切除するもので、その後の回復状況は、梅雨時季という想定内の環境でしたが、結果は想定外でした。
今年は普通の梅雨のようです。リノベーションを行うことで一番期待しているのが暖地型芝のセレブレーションが勢い良く芽を出してくれることです。しかし、日照時間が少なく、気温が低い梅雨時季特有の天候が続き、思うように芽を出してくれませんでした。対照的に寒地型芝のペレニアルライグラスは勢いを取り戻し、遠目の景観は取り繕いましたが、プレーヤー視点では決してベストな状態ではなく、選手達には申し訳ない気持ちです。
それでも、F・マリノスが勝ってくれたのでホッとする一方で、7月13日に行われる浦和レッズとの大一番に向けてコンディションを上げていかなければなりません。
当初は、一昨日より2回目のリノベーションを行う予定でしたが、回復状況が思わしくないため見送る判断をしました。その代わりと言っては語弊があるかもしれませんが、セレブレーションの苗を補植しています。
ハイブリッド芝にする前のティフトン419の時代から時々行っていた作業です。団地型芝に寒地型芝を追い蒔きするオーバーシード形式を採用している場合、ベースとなる暖地型芝はリスクを伴います。具体的に言うと競争です。同じフィールド内に性質が異なる2種類の芝種が存在することで両種が競争し、せめぎ合うのです。ある一定の時季は共存していますが、それぞれの生育適期には片方の芝種が休んでくれないと体力を維持できません。
初夏から秋口に掛けて短い間しか生育適期がない暖地型芝はどうしても不利になります。この競争のほかにもスタジアムという特殊な環境下ではオーバーシードを行う秋から芝種を切り替える春のトラジションに至る経過で、暖地型芝が衰退して前年より目減りすることがあります。
これを補う目的で日産スタジアムでは、これまでも暖地型芝の苗を専用の機械で補植してきました。
これを今回、セレブレーションになって初めて行っています。苗はスタジアム隣接の圃場で作ったものを使用します。目的は目減りしたセレブレーションを補ってあげることです。
作業は、機械で筋状に切った溝に苗を植込みます。凡その苗は機械で正確に植えこまれますが、どうしてもはみ出す部分が出るため手作業で丁寧に苗を溝の中に埋めていきます。
写真の右側半分が機械で植え込んだ状況で、筋状に白っぽく点在しているのが苗です。写真左側半分は手作業で苗を押し込んだ後の状態です。
植えた苗は早ければ1週間程度で芽が出てくれると期待していますが、芝生になるには1か月以上必要です。限られた養生期間で何とか仕上げなければなりません。
7月にはJリーグのほか、海外からの強豪を招いたビッグマッチも控えています。そして今年の最終目標は、開幕100日を切ったラグビーワールドカップです。
補植した苗の状況は、次回以降報告していきます。