観察日 : 2020年 5月8日(金)
場 所 : 水路、バタフライガーデン、テニスコート付近
生きもの: クワコ(幼虫)、ジョウカイボン、ベニシジミ
記事作成: 横山大将(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)
緊急事態宣言が5月末まで延長され、室内で過ごす時間が更に増えることとなりました。なかなか外に行けず、自然観察が好きな方の中には室内で過ごすことに、そろそろ飽きてきた方も少なくないでしょう。そんな方の暇つぶしに一役買えたら・・・と考えながら毎月記事を書かせていただいています。今月号もよろしくお願いします!
5月に入ってから気温が高い日が続いています。そのためか、公園内の昆虫たちの数も増えているようでした。水路沿いを歩いていると、ツヤツヤした葉をたくさんつけたクワの木が生えていました。その葉をよく見ると、薄いベージュ色のイモムシがちらほらとついていました。「クワコ」の幼虫です。
クワコ(幼虫)
過去の記事(生きもの観察日記316号)でも登場してもらったガの仲間のイモムシで、毒はありませんのでご安心ください。前回は1匹だけしか見つからなかったのに対して、今回はざっくりと見ただけでも10匹ほど見つかりました。名前の通り、クワの葉を食べて成長します。クワの葉を食草とするガ類で有名なものといえばカイコですが、これは絹糸を取るために「クワコ」を家畜化したものだと言われています。なので「クワコ」はカイコの野生種ともいえます。機会があれば「クワコ」とカイコの体型や顔つきを比較してみてください。
さて、多くの人が行き交う公園内。イモムシを愛でて10分余りですが、すれ違う人から怪訝そうな目を向けられ始めたので、移動します(確かに大柄な男が小さいイモムシにず~っとカメラを向けていたら怪しいですもんね・・・)。今度はバタフライガーデンにやってきました。様々な花が植栽されていますが、今日は風が強くチョウ類はあまり見られませんでした。そんな中、ふと足元を見てみるとカミキリムシのようなスレンダー体型の昆虫がいました。「ジョウカイボン」という名前のコウチュウの仲間です。
ジョウカイボン
自然観察会などで参加されたお子さんたちがよく「カミキリムシ捕まえたー!!」と言って持ってきてくれるのですが実はこれカミキリムシとは遠い仲間で、何に近いかと言われればホタルに近いんです。といってもお尻が光ったりはしません。前翅(ぜんし)が青緑色のものはアオジョウカイ、真っ黒なものはクロジョウカイと、割と多くの種類がいます。その中でも最もよく見かけるのはこの「ジョウカイボン」です。名前の由来については諸説あるようですが、「ジョウカイボン」は「浄海坊」と書き、これは歴史の教科書に出てくる平清盛のことで、平清盛が高熱で亡くなっており、原因が毒なのではないかというところから結び付けられた名前だそうです。しかし、「ジョウカイボン」には毒がなく、よく似た見た目で体液に毒を持つカミキリモドキの仲間と間違えてつけられたとされています。でも、カミキリモドキの体液も触れば水ぶくれや炎症は起こしますが、ちょっと触ったくらいで致死量というような猛毒ではないので安心してくださいね。ただ、触ったら手を洗いましょう。
「ジョウカイボン」についての文章が長くなってしまいました。最後に、よく見かける小型のチョウ類「ベニシジミ」がテニスコートの近くにいたので、写真を撮ってみました。
吸蜜(きゅうみつ)するベニシジミ
このチョウは近づいてもなかなか逃げません。色合いがオレンジと茶色、グレーといった配色のため、昆虫の苦手な方からドクガの仲間と勘違いされてしまうこともありますが、この「ベニシジミ」には毒どころか我々に害を与えるようなことはしないので、あまり邪険にしないでやってくださいね。
生きものたちの動きもかなり活発になってきました。観察に出かけたいのはやまやまですが、不要不急の外出は控え、手洗い・うがいをしっかりしてなんとかこの状況を切り抜けましょう。