芝生観察日記 第98話

芝生観察日記の第九十八話です。

令和二年7月10日(金)

<~ Road to 2019&2020 ~>

 

 いよいよ日産スタジアムにF・マリノスが帰ってきます。

 一昨日の湘南ベルマーレ戦では、勝率の良いニッパツ三ッ沢球技場で今季初勝利を飾りました。

 その勢いをそのまま明後日のFC東京戦でも発揮してくれることを期待します。

 我々ができることは、選手達が安心してプレーできる環境を整えることです。一昨年ハイブリッド芝へ張替えた後、チームからは常々グラウンドの硬さを指摘されてきました。

 芝生の弾力は、確かに選手の膝や腰、足首などの怪我に影響するため硬いという印象だけで安心してプレーに集中できないという側面があります。

 グラウンドの硬さを和らげる手段として、これまでもバーチドレンを掛けるなど、その都度対応してはきましたが、選手が望む弾力をなかなか提供できませんでした。

 そのため、今年は芝生自体が生み出す弾力を確保するため、冬季からコア抜きのエアレーションを繰り返し実施してきました。これが功を奏して、天然芝本来の弾力が生まれました。

 コア抜きのエアレーションで芝が良くなるなら早くやれよと思うかもしれませんが、ハイブリッド芝のNGワードであるため分かってはいても躊躇していました。

また、今年は、新型コロナウイルスの影響でJリーグが中断したことで、不幸中の幸いと言って良いのか十分な養生期間が確保できたため冬芝から夏芝へのトランジションも完了し、芝生自体のコンディションは近年にない状態に仕上がっています。

1-機械.jpg2-エアレーション.jpg

 スポーツグラウンド(スポーツターフ)の硬さは、その競技毎に求められる基準が違います。選手個人もそれぞれ好みが違うため、我々は何を基準として硬さを調整しているかと言えば、英国スポーツターフ研究所(STRI)が開発した「クレッグ・インパクト・ソイルテスター」という表面硬度を測る計測器の数値を基準としています。

 これは、500gのウエイトを30cmの高さから落とす減速度を測定します。1地点5回測定し、その平均値を見るのですが、STRIでは望ましい基準値を20-80Gmとしています。粘土質が多いヨーロッパと日本やアメリカなど砂質が多い環境では開きがあります。

 日産スタジアムでは、ハイブリッド芝にする前は70-80Gmで安定していたのですが、ハイブリッド芝にしてからは、100Gm付近を行ったり来たりしており、基準値をオーバーしていました。

3-硬度測定.jpg

 明後日の試合に向けて、最後の仕上げとして実施したバーチドレン後に表面硬度を計測しましたが、今回は60-70Gmで基準値内でした。ハイブリッド芝に変更後、60Gm台が出たのは初めてですが、確かに軟らかく感じます。

 ここまでは我々がイメージした通りに仕上がっていたのですが、悩ましいのがお天気です。7月に入ってからまともに太陽が出ない状態で、連日の雨も重なり夏芝にとって大変厳しい状態が続いています。

 梅雨入り後、比較的晴れる日が多く、順調な生育を見せていた夏芝もここへ来て生育が低下しており病気の再発が気になります。

 今年は、Jリーグの中断でどこのスタジアムも万全の状態で、綺麗な緑の絨毯をイメージされている方が多いかもしれませんが、今年は芝生泣かせ、そして管理者泣かせの難しい年となりそうです。

 まずは、明後日の試合に勝つことを願うのみです。

 次回は、試合後の状態を報告します。