芝生観察日記の第百三話です。
令和二年8月11日(火)
<~ Road to 2019&2020 ~>
梅雨が明けて連日猛暑が続いています。ここ3日は猛暑日となり危険な暑さです。
皆さんも熱中症には十分注意してください。
そんな猛暑の中でも夏芝は元気です。特にセレブレーションに勢いが出てきました。
今日は、セレブレーションへのバーチカルカット実施状況を報告したいと思いますが、まずは先日行われたJリーグ後の状況です。
試合の結果は、ご存知の通り残念ながら1対1の引き分けでした。サポートしきれていない歯痒さを感じています。。。
そして、試合後の状況ですが、夏芝特有の毛羽立つような細かな傷はできましたが、試合後に転圧して浮き上がった傷口の芝生を押さえつけると目立たなくなりました。サッチング、バーチドレンという更新作業が続いた後だったので影響が出るかなと若干気になりましたが、特に支障はなく、長梅雨の影響から着実に上向いている感じを受けました。
ちなみに当日の表面硬度は、86Gmでバーチドレンを掛けていなかったらどうだったのでしょうか。
次の試合は、23日の広島戦となります。この先は、新型コロナウイルスの影響で試合間隔が非常にタイトです。この2週間という期間は、養生期間であると共に大事な管理作業ができる期間でもあります。
このタイミングで、夏芝にとって大変重要な作業であるバーチカルカットを掛けるのか、掛けないのか。芝生を良くするという目標は同じですが、プロセスにおいてキーパーチームの中でも意見が分かれました。
バーチカルカットについては、このブログの他、「日産スタジアムのスポーツターフ」等にも出てきているので詳細は省略しますが、先日行ったサッチングの更に強い更新作業と理解してください。
夏芝にとって、特にハイブリッド芝と同時に採用されたセレブレーションという新種の夏芝には必然の作業なのです。ただ、これは本場アメリカでの話で、気候が違う日本、特に今年は長梅雨の影響で芝生自体の体力が低下している状況で果たして強い更新作業を行って2週間後の試合に間に合うのかという論点で議論が深まりました。東京2020に向けて一緒にワーキングチームに参加いただいている外部の有識者にも相談しました。
最終的な結論は、「Go!」です。梅雨が明けて本格的な夏となり、セレブレーションは要求量の高い陽光と気温を得たことで急速に勢いを取り戻し、著しい生育が見られることと、この先も猛暑が続く予報を考慮して実施することとしました。
バーチカルを掛けた直後は、細切れになったランナーが表面を覆っていましたが、スイーパーでカスを回収して、刈込みを行った後の状況が上の写真です。ただ、この写真では大したことなさそうですが、実際は結構な荒療治です。
ハイブリッド芝に張り替えて三年。セレブレーションという新種バミューダグラスの特性も少しずつ分かってきました。
天気予報はあくまでも予報であり、近年の気象状況を考えると絶対はありませんが、当てが外れたらどうしよう。と、恐れていては前進しません。
今回は、一昨年アメリカへ視察に行った際、現地のグラウンドキーパーから学んだセレブレーション特有の管理手法を基本として、これまで蓄積してきた経験を信じてトライすることにしました。
今回のトライが、日本の様々な環境要因に適合するのか、試行錯誤の日々です。
今後の状況は、また報告します。