芝生観察日記の第百二十七話です。
令和四年7月21日(木)
16日、17日の両日、今年3回目のコンサート、関ジャニ∞デビュー18周年の記念ライブ『18祭』が開催されました。
記録的な早さで6月27日に梅雨明けが発表されたと思いきや、今月に入ってからは梅雨に逆戻りしたような天候が続き、先月のコンサートによるストレスから回復してティフトンが勢い良く匍匐茎を出し始めた矢先、気温低下と曇天、多雨という芝生にとっては好ましくない天候に見舞われました。
そのため、猛暑で勢いを無くし、衰退しかけたライグラスが勢いを取り戻し、反対にティフトンは匍匐の勢いが止まって、緑度も低下する中でコンサートの設営が始まりました。
左:コンサート前日 右:コンサート翌日
結果から先にお伝えします。今年開催された3回のコンサートで一番ストレスが大きいように感じます。
上の写真でも判ると思いますが、コンサート前後で緑度に差があります。陽の加減もありますが、コンサート後は明らかに黄化しています。
コンサートの後は、芝生の保護材を設置するため日照不足と蒸れによって多少なりとも黄化はしますが、その度合いを極力少なくするため毎回、コンサートが開催される時期や芝生の状態、前後の利用など、様々な要件を考慮して前後の作業計画を立てるほか、芝生保護材の選択を行います。
今回のコンサートでは、テラプラスとアミーを組み合わせました。テラプラスは、芝生保護材として最もポピュラーな資材です。ただ、テラプラス単体で使う課題として芝生面と接する円形脚部の跡が芝生に大きなダメージを残します。
写真は、過去のコンサート後にテラプラスを剥がした様子です。円形脚部以外は、日照不足による黄化はありますが、荷重が掛からないので芝生へのストレスは比較的軽めです。ただ、円形脚部は荷重を受けているので圧し潰されてしばらく回復しません。
コンサート後、次の利用まで十分な養生期間を設けられるならこのまま自然な回復を待つのみです。しかし、今回もそうですが2週間後にはJリーグが予定されており、少しでも回復を早めるために近年は芝生保護材の下に緩衝材を入れるようにしています。現在、芝生保護材と緩衝材について数種類の組み合わせパターンがあり、それぞれ長所と短所はありますが、これだけ使い分けているのは日産スタジアムだけではないでしょうか。
今回のコンサートでは、テラプラスの下にアミーという緩衝材を組み合わせました。
テラプラスの裏側、そしてアミーはこんな感じです。網の目だから『アミー』実にべたな名称です。
テラプラスに以前のような円形脚部はありません。アミーを組み合わせる前提で全て取り外されています。そのため、このまま設置すると格子状に芝生に切れ目が入ってしまうのでアミーを敷くことで荷重が分散されて、格子の跡も付き辛くなります。
今回のコンサート前後の写真です。左がコンサート前、右がコンサート翌日になります。
そして、上記の接写です。写真では違いが分からないかもしれません。なんとなく右側、コンサート後の方が茶というか黄色っぽく見えませんか。黒っぽく見えるのはライグラスが衰退して枯れた状況です。アミーを敷いたことで格子状の跡は目立ちませんが、蒸れと日照不足の影響はどうにもできません。
近年は毎年が異常気象で、普通が通用しないのでトランジションだけでも試行錯誤ですが、3カ月連続のコンサートはなかなか難しいものがあります。
この後、2日、3日と経過するに連れて黄化した葉がふるわれて、密度が減少します。その後、天候にもよりますが新芽が出て回復に向かいます。今回のコンサートで残っていたライグラスは殆どが衰退しました。張替えの必要は無さそうですが、トランジションの進捗としては、コンサート前が7~8割程度でしたから5~6割程度まで後退した印象です。
30日に控えるJリーグ、首位を走る我らが横浜F・マリノスにとって2位アントラーズとの大事な一戦です。限られた時間で我々も最善を尽くしたいと思いますが、人間ができることには限界があります。
何よりもお天気を願うしかありません。