芝生観察日記の第八十六話です。
平成31年4月15日(月)
<~ Road to 2019&2020 ~>
Jリーグの2019年シーズンが始まり、早2カ月が経過しようとしています。我らがF・マリノスも既に7節消化し、3勝3分1敗の5位につけ、好調を維持しています。
この間、3月22日にはキリンチャレンジカップ「サムライブルーvsコロンビア代表」の試合が行われましたが、残念ながら0対1と惜敗を喫しました。
昨年の6月に日産スタジアムでは、全面ハイブリッド芝への張替えを行い、今年開催されるラグビーワールドカップのプレ大会と位置づけられて昨年10月27日に開催されたブレディスローカップでは、慣れないハイブリッド芝の管理に象徴されるような結果となりました。
その結果、ラグビー組織委員会を通じてWRL(ワールドラグビーリミテッド)より本大会に向けて芝生の状態に関する改善要求を受けました。そして、彼らが推薦するオーストラリアの芝生コンサルティング並びに組織委員会が契約している外国のコンサルティング等とともにワーキングチームを結成してコンデイションの改善にあたることになりました。
これまでに、skype会議4回とワーキングを2回開催し、芝生の現状確認、これまでの管理内容、そしてこれからの管理計画作成など専門的な議論を交わしています。
2002年のワールドカップの時は、前年に行われたコンフェデレーションズカップの状態がFIFA(国際サッカー連盟)から高く評価され、異例となる感謝状をいただきました。
良くも悪くも結果が全てですから外国のコンサルティングの意見を受け入れるということも、国際大会を成功させるためには、歯痒さを感じつつも柔軟に受け入れていくしかないと考えています。
とは言え、コンサルチームの中には現にオーストラリアの有名なスタジアムでグラウンドキーパーをしているメンバーもおり、ミーティングを行っていく中で共有できる部分も多々あります。また、ハイブリッド芝初心者の我々としては日本に居ては学べない知識もあるため、良い刺激となっています。
ワーキングでの芝サンプリング状況
サンプリングしたハイブリッド芝
上の写真は、2月のワーキングで行われた芝生のサンプリング状況とサンプリングしたハイブリッド芝です。ここで共有できた課題は、当初4cmの厚さで張った芝生が現状6cm近くになっているということが分かりました。つまり、ハイブリッド芝の機能を発揮する人工芝パイルは、本来地表付近になければならないのですが、地中1cm~1.5cmに埋もれているため昨年のブレディスローカップで見られたような傷は、人工芝が絡んでいない地表面付近の芝生が削り取られた傷だったのです。
そのため、ワーキングでは「埋もれたパイルをなるべく地表面に近づける作業を行う必要があるということと、暖地型芝生のセレブレーションをいち早く表面に出すようにトランジションを継続的に進める」という結論に達しました。
この結論を受けて、Jリーグを始めとした利用の合間を縫ってトランジション作業を実施しています。
今日は、ハイブリッド芝のバッキング(基布)を傷めないように浅めのコア抜きエアレーションを実施しました。通常のエアレーションは8cm程度の深さでコアを抜くのですが、今回は使い古した短いタインを使い4cm程度の深さとしました。エアレーションの目的、効果はご存知の通りだと思うので省略します。
今後も同様に、エアレーションやバーチカルカットなどを交互に行い、目指すは5月末と6月末の2回に分けて実施することとなった「リノベーション作業」です。この聞き慣れないリノベーション作業はハイブリッド芝には欠かすことができない作業となります。しかし、その目的、効果とは裏腹にダメージが大きく、芝生が回復するまで長期間の養生を要します。これは、今までに我々が経験したことがない技術が必要となります。
今年はラグビーワールドカップに向けた準備として、Jリーグを含む様々な関係機関の協力によりリノベーションが実施可能な利用調整ができましたが、大会後には難しい宿題が残りそうです。しかし、まずは今年を乗り切らねばなりません。次回はバーチカルカットを行うタイミングで報告します。
次回をお楽しみに!