芝生観察日記の第百一話です。
令和二年7月29日(水)
<~ Road to 2019&2020 ~>
22日の夜に行われた横浜ダービー後の状況をお伝えします。当日、ブログを書いている時間帯は新横浜公園周辺の上空に線状降水帯が発生して、激しい豪雨の中でした。予報では、試合の時間帯も雨予報でしたが、天気は急速に回復して午後には快晴とまではいきませんが、強い日差しが照り付けて気温、湿度共に上がり、汗ばむ中での試合となりました。超が付くくらい排水性に優れた日産スタジアムのピッチは、急速にウエットからドライに変わっていきました。
当日の芝刈高は、前日に12㎜で刈ったまま迎えました。試合前の表面硬度は81Gm。基準値を若干上回りましたが、コンディション的には全く支障のない範囲でした。
試合後は、こんな感じの傷が全体に散乱しました。FC東京戦の時と同様に夏芝特有の傷でした。地表を這うランナー(匍匐茎)をスパイクで引っ掻くイメージなので毛羽立ったように見え、画面上は相当荒れた印象を受けると思いますが、刈込めば綺麗になり、天気さえ良ければ1~2週間で傷は回復します。
また、これだけ連日雨が降り、当日も60㎜近い雨が降る中、通常は地盤が緩んで選手が踏み込んだ箇所は凹んで凸凹になりますが、さすがハイブリッド芝は根を補強しているため試合後も表面は滑らかでした。
試合後の状況はこのくらいにして、ようやく梅雨明けの便りが聞かれるようになりました。あと少しの辛抱です。
しかし、今年の夏は短そうです。限られた時間を大切に、そして有効に管理に反映させなければなりません。この夏から秋にかけた状態が来夏の状態に繋がります。
まずは、梅雨明け前の準備作業です。刈カスの他、病気や日照不足、その他の自助作用で篩い落とされた葉(サッチ)が表面に堆積しているため、サッチングを行いました。サッチが過剰に堆積すると病虫害の温床に繋がるため適宜除去しなければなりません。
今回は、3連芝刈り機(3連モア)のユニットをバーチカルユニットに変更したタイプの機械でサッチングを行いました。各ユニットにはタングステンチップの刃が付いた45枚のブレードが装着されており、そのブレードが高速回転で芝生を掻き上げて、サッチを除去します。
作業前後の写真です。表層に堆積したサッチの除去だけでなく、芝生の密度も減少しています。夏芝は、適切な時季にランナー(丸で括った部分)を切ることで、そこから新たな芽が出てきます。回収されたサッチは、刈カスと違い茶褐色に枯れた葉なのが分かります。
長梅雨による日照不足と多雨で、芝生が受けているストレスは計り知れません。この時季に更新作業を行うことは、リスクを伴います。燦燦と陽光を浴びる中で勢い良く生育する芝生であれば更新作業後の回復状況も想定できますが、今年のような天候は想定通りに行かない恐れもあります。
今年は、全国のグラウンドキーパーや芝生管理者さんが苦悩していることでしょう。芝生の管理は、グラウンドキーパーが10人いれば10通りの考え方、管理方法があります。なので、今回このタイミングでサッチングを行うことに悲観的な考えを持つ方がいても不思議ではありません。
それぞれが管理する芝生を取り巻く様々な環境や条件を熟知する管理者さんが、豊富な経験と知識、技術を持って実施可否の判断をしなければなりません。
今回の実施可否は、日産スタジアムのキーパーチームで慎重に議論を重ね、このタイミングでの実施を判断しました。勿論良くなるという自信を持っていますが、天気ばかりはどうにもなりません。梅雨明けを切に願うばかりです。
我々が判断した結果を随時お伝えしていきます。