芝生観察日記 第117話

芝生観察日記の第百十七話です。

令和三年3月 8日(日)

<~ Road to 20192020 ~>

 3月7日、緊急事態宣言延長の影響により、最大5,000人という入場者数制限の下、4,906人のお客様が見守る中で日産スタジアムでの2021年シーズンのJリーグ初戦、横浜F・マリノスvsサンフレッチェ広島の試合が行われました。

 天候は曇り、気温は11℃でしたが、底冷えする真冬並みの寒さの中で行われました。

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 昨年の11月以来約4ヶ月ぶりのJリーグです。この間、こまめに養生シートを掛けて冬芝を熟成してきました。

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 スタンドから見ても、ピッチレベルから見ても良い仕上がりです。晴天であればもう少し光沢のある美しい緑なので少し残念でした。

 スタジアムに来場された方は気づかれたと思いますが、ホーム側2階スタンドには「奪還」という大きなバナーが掲げられており、今シーズンに掛けるチームの意気込みが感じられました。

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 写真は、スタジアムで試合を観戦された事がある方は、試合前に見かけたことがあるかと思いますが、試合開始の90分前、Jリーグだと前座試合のハーフタイム位のタイミングでスーツを着た数名がピッチをぶらぶら歩く光景を見かけたことあると思います。「グラウンドチェック」又は「ピッチインスペクション」や「フィールドインスペクション」と呼ばれるもので、試合全体の運営を監理するマッチコミッショナーと共に、試合当日の審判員、チーム運営担当者、サッカー協会、そして我々グリーンキーパーが、試合が滞りなく開催できるのか検査・確認するものです。

 芝生の状態は勿論、ピッチサイズは正確か。ラインは真っすぐか。ゴールポストの高さは適切か。ネットは切れたり、穴が空いたりしていないかなど、歩きながら多くの視点でチェックを行います。

 実際Jリーグで、グラウンドチェックにより試合が中止になったという話は、自然災害や最近ではコロナによる影響以外記憶にありませんが、ラインの曲がりやネットが外れているなど、ちょっとした修正点は時々指摘を受ける場合がありますが、試合が始まる前までに修正することで試合は滞りなく行われます。

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 Jリーグでは、昨年導入を中断したVAR(ビデオアシスタントレフェリー)を今シーズンと来シーズン全試合で導入することとしました。これが、実際に微妙な判定の際に、主審が確認するモニターです。

 昨日の試合でも何回か使用され、得点に結びつく判定がありました。

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 芝生の話題に戻ります。試合は激しい点の取り合いで見応えがありましたが、残念ながら3対3の同点で終了し、マリノスはホーム開幕戦を白星で飾ることはできませんでした。

 試合前に行った硬度調査の値は、76ポイントで数値上は理想的な値でした。ハイブリッド芝を導入した直後には、130ポイントなんていう時もありましたが、ハイブリッド芝との付き合い方も少しずつ分かってきたので、管理の加減で調節できるようになりました。

 写真は、試合後の状況です。激しい点の取り合いでしたが、スパイクの跡や擦り傷は残ったものの、深い傷や凹みは発生しなかったので、傷口に目砂を入れるような場所は殆どありませんでした。

 次は、週末14日の浦和戦です。試合が続きますが、今回の傷を少しでも回復させ良いコンディションで選手達を迎えたいと思います。

観察日 : 2021年 2月28日(日)

場 所 : 園内各地、大池

動 物 : モンキチョウ、ホシハジロ

植 物 : コブシ、シダレヤナギ、ホトケノザ

記事作成: 阿部裕治(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)

 

 2月の最終日。今年度も残すところあと1ヶ月ですね。午前中はリモートで野鳥観察会を行っていたので、お昼から観察をスタートしました。

 新横浜公園に入るため、多目的遊水地の堤防を下りていると、白いチョウがひらひらと飛び着地。モンシロチョウかなと思いましたが、後翅(こうし)の裏面中央に白っぽい点が見えたのでモンキチョウでした。よく見ると翅(はね)がピンク色で縁取られているんですね。とてもきれいです。気温は10℃前後で低めでしたが、風がなかったため日差しで温かく、体を温めていたのでしょう。

 

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地面でじっとしているモンキチョウ

 

  第2レストハウスから水路沿いに大池方向へ。周りの様子を見ながら歩いていると、木の枝先に今にも咲きそうな白い花を見つけました。コブシです。咲きそうなのはまだ2つほどでしたので、これから咲き誇る姿が楽しみですね。名前の由来は、果実が握りこぶしの形に似ていることからと言われています。

 

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開花目前のコブシ

 

 メドウガーデンの近くに来ると一面赤紫色になっている場所がありました。近くで見ると、その正体はホトケノザ。これだけのホトケノザのお花畑はなかなか見ることがないですね。日曜日で来園者が多く、気になっている人がたくさんいるようでした。すぐそばの水路沿いに生えているシダレヤナギは、若草色に芽吹き、青空にとても映えていました。

 

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ホトケノザ

    赤紫色の絨毯がひかれているようですね。       

 

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シダレヤナギの芽吹き

 

 大池の様子も観察しますが、亀の甲橋よりも上流側は、オカヨシガモとオオバンがちらほらという程度で普段よりも少ない印象です。水際突堤から排水門の方を見ると、ハシビロガモやオカヨシガモの群れがいました。中にホシハジロが1羽混じっており、頻繁に水に潜って餌をとっている様子でした。本種も多くのカモ同様に冬鳥として渡来し、鶴見川では下流域で多く観察することができます。冬鳥の観察は終盤になってきますが、これからは渡りの時期で旅鳥や夏鳥の到来が楽しみですね。新横浜公園を訪れた際は、鳥や虫、植物など、ぜひ生きもので春を見つけてみてください。

 

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ホシハジロ

水に潜っていたので顔に水滴がついていました。

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 先日、中央広場ローズガーデンのオベリスク(つるバラの台座)を交換しましたが、そのオベリスクに新しいバラを植えました。

 今回植え付けたバラは「アンジェラ」という品種のバラです。花付きが良く、コーヒーカップのように花の形がカーブしているカップ咲きで、花の色は桃色です。バラの中では比較的病気にも強い種類です。

 バラの植え付けをこの寒い時期に行うことは、あまり適していません。成長が鈍いこの寒さに加え、植え付けのため、根や茎を切りストレスがかかってしまうからです。そのため、少しの間、寒さを和らげることを目的に不織布を巻いています。また、植え付け直後は乾燥しているため、当分散水にも気を付けなくていけません。

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 アンジェラは4株植え付けています。このバラは横浜市市庁舎に植栽されていたもので、バラを元気に保つために、バラ同士の株間を確保するために間引きをしたバラをいただきました。

 温かくなって成長し、花を咲かせるのが楽しみです。

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 小机競技場ローズガーデンよりも前、公園開設当初からあった中央広場ローズガーデンにはモッコウバラなどのつる性のバラも植わっています。つる性のバラは、狭い範囲で綺麗に仕立てるためにオベリスクという台座を使っていますが、そのオベリスクが経年劣化により破損してしまったため、オベリスクの交換を行いました。

 

 前回オベリスクを設置してから5年ほど経過したことで、その間に伸びたバラのつるがオベリスクに絡みついています。

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 まず初めに、オベリスクを外すためバラを剪定し、新たなオベリスクと交換しました。今回はオベリスクを交換するため、バラを剪定していますが、冬季のバラの生育が鈍るため強めに切っても傷みにくく、新芽をつける前であるため、剪定するには適しています。      

 新しいオベリスクを設置した後は、バラのつるが今後もオベリスクに巻き付くように、紐で結びつける誘引作業も行いました。ご存知だと思いますが、バラにはたくさんのトゲがありますが、さすがバラの専門家は上手に作業しますね。

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 今はまだ花を咲かせていませんが、温かくなった春以降に花を咲かせます。新横浜公園に来る一つの楽しみとして、ローズガーデンもお楽しみください。

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芝生観察日記 第116話

芝生観察日記の第百十六話です。

令和三年2月9日(火)

<~ Road to 2019&2020 ~>

 2月4日、立春の日に例年より18日早く「春一番」が関東地方に吹きました。

 まだ氷点下となる朝もあり、体感的に春を感じる肌感覚ではありませんが、暦の上では春です。私たち人間が本格的に春を実感するのは桜が咲く頃なのでしょうが、芝生には一足先に春が訪れています。

 先週末の6日(土)、7日(日)で今年初めてのサッチング掛けとエアレーションを実施しました。

 まずは、8日ぶりに刈高15㍉で刈込みを行い、その後を追ってサッチングを掛けました。今回は、今年初のサッチングなので-3㎜(地際より3㎜上げた高さで刃が回転する設定)でサッチングリールを設定しました。

1_手刈り.jpg 今回はトランジションが目的というより、長い間養生シートで保温され、ライグラスが密度を増やして蒸れ気味だったので密度を梳くことと、表層に堆積したサッチを除去することを目的とする設定でした。今後、気温が上昇してライグラスの活性が更に上がっていけば±0㎜(地際ギリギリの高さで刃が回転する設定)でトランジションを目的として定期的に行うようになります。

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 判り辛いかもしれませんが、写真は回収されたサッチの状況です。蒸れた黄化葉が目立ちます。

 そして翌7日(日)には、十字タインを使ってエアレーションを行いました。

3_十字タイン.jpg 今回は久しぶりに十字タインを使いました。写真のように十字型のタインが芝生にそのまま十字に穴を空けます。いつも使う円柱状のムクタインより空隙率が大きく、穴が比較的長く残るのが特徴です。日産スタジアムではハイブリッド芝の基布による抵抗があるため、鋭利な剣状の刃を持つ十字タインで基布を確実に貫通するのに用います。

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 写真のように、刈高15㎜ですが作業後にもしっかり穴が確認できます。芝生が覆い被さっているため十字には見えませんが。

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 エアレーション後は、ローラーで転圧して細かい不陸を修正します。機械のタイヤ跡や昨シーズンの利用でできた凸凹を整地して今シーズンの開幕に備えます。

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 最後に液体の酸素供給剤や土壌改良剤など穴を空けたタイミングで効果が期待できる資材を散布して一連の作業は完了です。

 この後、再び養生シートを掛けて1週間程度養生します。

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 写真は厳冬期にも関わらず、冬越ししたセレブレーションが休眠せず緑度を維持しているのが確認できました。立春を過ぎたとは言え、さすがに萌芽するとは考え辛いので、長らくシートで保温されて霜にも当たっていないため元々耐寒性に優れた性質があるセレブレーションが、たまたま冬越しできる環境だったのでしょう。

 しかし、本来はしっかり休眠して春まで養分を蓄えておいて欲しいのですが、こうして緑度を維持したまま春を迎えてしまうと養分不足で体力を消費してトランジションに影響する不安があります。そのため冬の間も肥料を完全に切ることはできません。       

 まだ、芝生の根が動き出すには少し時間が掛かるので、今回の作業による効果が確認できるのはもう少し先になります。

 一雨ごとに気温が上がり、春が近づいていきます。今後は作業頻度も徐々に増えて行くので、また報告します。

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