観察日 : 2021年 9月18日(土)、20日(月)、27日(月)
場 所 : 水際突堤、大池など
動 物 : トノサマバッタ、コガモ、カルガモ
植 物 : オギ
記事作成: 阿部裕治(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)
9月18日土曜の朝。台風14号による大雨の様子が気になり、鶴見川(亀の子橋)の水位を確認すると4mを超えていました。その後も水位は上がり、鶴見川多目的遊水地に流入。約19万m3を貯留しました。一昨年、ラグビーワールドカップの日本対スコットランド戦の前日である10月12日の流入以来、22回目となりました。今回は、園路が浸かるほどではなかったようです。
国土交通省京浜河川事務所記者発表資料
鶴見川多目的遊水地で台風14号による洪水を貯留 ~運用開始以降、8番目に多い貯留量~ | 記者発表 | 国土交通省 関東地方整備局 (mlit.go.jp)
多目的遊水地の機能
新横浜公園の多目的遊水地機能|社会貢献活動|日産スタジアム (nissan-stadium.jp)
普段の新横浜公園
9月18日 13時の様子 園路
9月20日月曜。流入の影響でまだ閉鎖中の施設はあるものの、北側園地の園路が開放されていたため、観察にやってきました。ついこの間まで賑やかだったセミの鳴き声は聞こえず、オギの穂がそよいでいました。
水際突堤に来ると、園路のまん中に大きなバッタが1匹。トノサマバッタでした。よく見ると腹部をもぞもぞと動かしており、産卵しようとしている様子。しかしそこはアスファルト。どう頑張っても産卵器を差し込むことはできません。何回か場所を変えてみるもののアスファルトの上なので産卵できず。徐々に草むらの方に移動していき、草の中に入っていったので、無事に産卵できたことでしょう。
草地広場は閉鎖中
そよぐオギの穂。光が当たり輝いています。
産卵器を開閉させ、掘ろうとしている?
腹部を曲げて産卵器を入れようとしている
9月27日月曜。カモの仲間で冬鳥として早く飛来するコガモが、9月に入ってから何回か確認されていましたが、肝心の写真が撮れていなかったため再チャレンジ。車で亀の甲橋を渡るとき、大池を見渡すと水面に20羽ほどの鳥が見えたため期待がふくらみます。園内に入り早速大池へ。水際突堤周辺には、20羽近いカルガモ集団の中にコガモが6羽混じっていました。排水門方向にもカルガモとコガモが見えました。コガモの小ささは、カルガモと比較すると分かりやすいですね。コガモの雄は、これから換羽(かんう)していき、11月中にははっきりわかるようになるでしょう。今年も冬鳥シーズンが到来。どんな鳥が来てくれるか楽しみですね。
カルガモとコガモ 大きさの違いが一目瞭然
「新横浜公園四季折々の生きもの観察会」(協賛:株式会社春秋商事)今年度の3回目を開催しました。
この観察会は、鶴見川の多目的遊水地として水と緑が豊かな新横浜公園と生息する多種多様な生きものの理解を深めていただく機会として、年5回の開催を予定しています。
今回は、大池と修景池に仕掛けておいた小型定置網と箱型の網かご仕掛けを引き上げます。また、タモ網と投網を使っての採集も行ない、池の生きものを観察します。突堤では、水面をびっしり覆っているヒシを地引網のように引っ張り、収穫を行います。
講師はNPO法人鶴見川流域ネットワーキングさんです。(以下npoTRネット)。
秋は、スズメバチに注意が必要です。ハチがいたら、振り払うような動作をしたり、大声を出したりするなどの刺激を与えないようにして静かに後ずさりしましょうと教えてもらい、大池に向かいました。
npoTRネット阿部さん。持っているのは箱型の網かご仕掛け
この仕掛けは、前日と当日朝に網の中にエサを入れ、池に投げ入れておきました。引き上げてみるとアメリカザリガニやモツゴが採集できました。
アメリカザリガニ
次にタモ網を使います。網の平らな部分を底につけて、足でガサガサと追い入れます。ヤゴがたくさん採れました。
タモ網
シオカラトンボのヤゴ
次は投網を使ってみましょう。網の先には、鎖のおもりと袋状の網がついており、そこに生きものが入るようになっています。
地上で投げてみました。きれいに丸く広がりました。
大池に投げた投網はモツゴなどが採集できました。
モツゴ
いよいよ、たくさんの種類の生きものが入っているか期待される定置網を3人掛かりで引き上げます。魚以外の生きものも入るよう、エサとして魚屋さんから用意した魚のアラも入れてみました。シイラの頭などが入っています。
定置網
クサガメ(オス、メス)、スッポン、モクズガニ、テナガエビなどがいました。魚はブルーギルとモツゴがいました。
クサガメ(大きい方がメス)
スッポンがnpoTRネット横山さんの方に首を曲げています
モクズガニ、ザリガニのつかみ取りが人気
今日みつけた生きものたち
お魚以外の生きものが多かったですね。生きもの好きな参加者のみなさんは、虫探しもされていて蝶やバッタなどを捕まえていました。
最後にヒシの収穫に突堤へ移動します。茶色くなっているのはジュンサイハムシに食べられてしまったところです。
水面にびっしりのヒシ
ヒシは長い茎が水中に伸びています
水中の茎にロープをくくりつけて引き上げました
黙々と実の収穫に夢中
収穫したヒシの実
ヒシの実は、一晩水にさらしてあくを取った後、20分~30分くらい塩ゆでして、ごはんに混ぜたり、炒め物にして食べられます。でんぷん質が多く含まれていて栄養価が高いとされ、ひなまつりの菱餅に使われたそうです。
大池では、魚やエビ、カニ、カメ、ヤゴといったたくさんの生きものを観察することができました。それぞれの生きものにとって適した環境であることに加え、水辺の植物やヒシなどが水中の多様な環境をつくり出し、多様な生きものが暮らせているのではないかと思います。
今回の観察会で捕まえた生きものたちは、観察終了後、公園内に戻しています。ご来園のみなさまも公園内で捕まえた生きものは放してあげるなどの配慮をお願いします。網の仕掛けなども観察会のための特別な設置であり、柵内に入ることはできませんのでご了承ください。
毎年、新横浜公園の田んぼに設置される案山子(かかし)の製作を行いました。
8月22日、熱中症と感染症予防に十分注意を行い、「日産スタジアム運営ボランティア グリーン&クリーン部会」が主管して、横浜市民の限定6家族を募り、ボランティアさんと一緒に案山子(かかし)11体(イレブン)を製作しました。
案山子(かかし)の骨組みと古着などは、ボランティアさんが事前に準備して、参加者が自分たちのイメージで着付けしていきます。
今年は、ボランティアさんが作った、「案山子(かかし)作り方」の冊子を参考に、家族が協力して作りました。
子どもと、お父さん、お母さんとの共同作業は笑顔もあり、ボランティアさんも少々お手伝いしましたが、楽しそうな光景でした。
髪型を整えて、顔を書き込んで完成です。案山子(かかし)への願いを込めたメッセージも書きました。
10月上旬の稲刈りまで、田んぼには鳥から稲を守るため網を張って、案山子(かかし)イレブンは田んぼの稲と公園の来場者を見守っています。
皆さん、公園に見に来て下さいね。
「新横浜公園四季折々の生きもの観察会」(協賛:株式会社春秋商事)今年度の2回目を開催しました。
この観察会は、鶴見川の多目的遊水地として水と緑が豊かな新横浜公園と生息する多種多様な生きものの理解を深めていただく機会として、年5回の開催を予定しています。
今回は、セミの抜け殻標本作りと木にしかけたトラップに集まる昆虫等の観察、セミの幼虫や羽化(幼虫から成虫になる様子)の観察を行いました。
講師はNPO法人鶴見川流域ネットワーキング(以下npoTRネット)さんです。
まずは「セミの抜け殻標本」を作りましょう。セミの抜け殻をケースのなかに配置して、1つの抜け殻にピンを4本使います。ピンを打つ位置や向きを教えてもらって、みなさん上手に完成することができました。
うつ伏せと仰向け状態の2つの抜け殻を固定しました。(仰向けは転がって難しい!)
逆さにしても動かないのが理想です
抜け殻標本作りを教えてくれたnpoTRネット横山さん
抜け殻のおしりの方をよく見て、ホワイトボードに赤く描いてあるように丸いものがあるのはオス、尖ったもの(産卵管)があるのはメスなんですよ。
外へ観察に行く前に、今回の観察会のために仕掛けてあるバナナトラップの作り方を教わりました。材料は、ストッキング、バナナ、ドライイースト、チャック付きのビニール袋、お酢を使うといいです。空気を抜いて綴じ、もみほぐして一晩くらい発酵させます。無酸素状態にするのがポイントです。
バナナトラップの作り方を教えてくれたnpoTRネット阿部さん
トラップを仕掛けたのはカブトムシの好むクヌギやコナラの木があるところです。これらの木はスズメバチなどもいることがあるので、いないことを確認してから観察するようにしましょう。
雨の降る中、みなさん雨具を着て、子どもたちはスキップして元気に出かけました。元気な姿に勇気をもらいながらもnpoTRネットさんと新横浜公園スタッフは、この雨ではもしかしたらカブトムシがいないかもしれないと少し不安な気持ちでいました。
コクワガタ(まさかのアゴが4つ?2つは影です)
いてくれましたカブトムシ!
手の上にいるのはメスのカブトムシ
「カブトムシに触りたいー」と子どもたちが喜んでいました。バナナトラップだけじゃなくて周りの幹や足元も注意深く昆虫を探していました。観察熱心ですね。数は少ないですが、コクワガタ、カブトムシのオスとメス、ほかにもベニスズメ(スズメガの仲間)やケシキスイの仲間、サビキコリ(コメツキムシの仲間)、シロテンハナムグリを観察することができました。次はセミを観察しに移動しましょう。
地面にいるセミの幼虫を踏まないように足元に気をつけて進みます
アブラゼミの幼虫
羽化を終えたばかりのミンミンゼミ
アブラゼミの羽化 翅(はね)がまっ白です!
「しろーい」「キレイ」とみなさん写真をたくさん撮っていました。セミの羽化も見られてよかったです。部屋に戻り、新横浜公園内で撮影した生きものを紹介してもらいました。そのなかにセミの幼虫が殻を破ってから羽化を終える状態までの動画がありました。約50分間もかかるのですね。セミも撮影されたnpoTRネットさんもお疲れさまでした。
次回の四季折々の生きもの観察会は9月11日(土)開催です。この日は、新横浜公園の池の生きもの(魚)を観察します。皆様のご参加をお待ちしています。
なお、今回観察会のために特別にトラップ設置を行いましたが、普段は無断でのトラップ設置は禁止となっております。また、公園内で捕まえた昆虫は、放してあげるなどの配慮をお願いいたします。
観察日 : 2021年 8月12日(木)
場 所 : テニスコート裏手のスロープ付近、水路周辺、大池周辺
生きもの: ウズラカメムシ、ヒメウラナミジャノメ、シオカラトンボ、ヒメアトスカシバ、アオモンイトトンボ
記事作成: 横山 大将(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)
立秋を過ぎ、暦の上では秋。でも、来る日も来る日も猛暑。本当に秋を感じるのはまだ先だなぁ、と思う今日この頃です。筆者は暑さにめっぽう弱いので、まだ涼しい朝8時前から観察をスタートしました。
公園内に降りていく道中、スロープ脇の茂みに目を向けるとイネ科植物の穂に1匹の昆虫がしがみついています。これはカメムシの一種、「ウズラカメムシ」です。
イネ科植物の穂にしがみつくウズラカメムシ
名前の由来は皆さんもよくご存知、鳥のウズラから。背面の模様や尖った頭部の形状がウズラとそっくりだということでこんな名前になったといわれています。イネを食害するので米農家さんからは嫌われますが、頭でっかちでどことなく可愛らしいカメムシです。
水路の方に移動してみました。すると早速、茂みの隙間をひらひらと小さなチョウが飛んできました。タテハチョウの仲間、「ヒメウラナミジャノメ」です。花の蜜を吸いにやってきたようです。
吸蜜中のヒメウラナミジャノメ
小さな体と、翅(はね)の裏にある波模様と目玉模様から「姫裏波蛇の目(ヒメウラナミジャノメ)」という名前が付けられたとされています。人によってはこの目玉模様が気持ち悪いと感じるかもしれませんが、ジャノメチョウやヒカゲチョウ類の種を調べるのに大変重要な模様でもあります。目玉模様の付いたチョウを見かけることがあったら、苦手でない方はぜひ、何という種類のチョウなのか調べてみてください!意外と楽しいですよ!
水面の開けた水路に移動してみると、トンボがたくさん飛んでいます。新横浜公園をはじめ、池のある公園ではよく見かける「シオカラトンボ」です。
葉っぱにとまったシオカラトンボのオス
飛ぶスピードが速いので、どこかにとまってくれるのを待つことにしました。待つこと5分。目の前の葉っぱにとまってくれました!すかさず連写。いつ見ても惚れ惚れするカッコ良さ。複眼の透き通ったブルーも引き込まれそうな美しさです。
次はクズが茂った水路に移動です。葉っぱの上に何かいないかな~、とゆっくり歩いていたところ、黒と黄色のしましま模様が目に入りました。ハチのように見えたので、遠巻きにじっくり観察してみると「ヒメアトスカシバ」というガの仲間でした。
交尾中のヒメアトスカシバ(左:オス/右:メス)
今回、初めて交尾中のペアを観察できたのですが、オスとメスで体色が随分と違うことに驚きました。ヒメアトスカシバはドロバチ類に擬態しているといわれていますが、オスの方はあまりハチっぽくないですね。もちろん、ガなので刺してくることはありませんので、もし見かけてもそっとしておいてあげてくださいね。
最後に大池の周辺を観察します。足元を細身のトンボがたくさん飛んでいます。イトトンボの仲間、「アオモンイトトンボ」です。
交尾中のアオモンイトトンボ(上:オス/下:メス)
よく、ハート形に例えられるアオモンイトトンボの交尾を間近で撮影できました。しかしよく見ると何となく違和感が。オスは腹部の第8節が全体的に水色、メスは腹部が全体的に黒色なのですが、2匹ともオスっぽい体色なんです。後で調べたのですが、メスの中には成熟するとオスそっくりの模様になる「オス型」という型が少ないながら出現するそうです。 "生きもの好き"になって20余年、まだまだ知らない事の方が多いですね。日々勉強です。
今回は多くの生きものを観察できたので、少々長くなってしまいましたが、これでも観察できた生きものたちのほんの一部です。特に昆虫を観察するには最高の時期でもあります。熱中症や新型コロナウイルス感染対策等々、充分な対策をしたうえでフィールドワークを楽しんでください!