観察日 : 2017年 2月27日(月)

場 所 : 投てき練習場 そば

生きもの: ネコヤナギ

記事作成: 阿部裕治(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)

 

 気温ではまだ春は近くなさそうですが、公園内を歩くとヤナギの芽吹きや足もとに咲く野の花などから、着実に訪れている春を感じることができます。今回はそんな生きものの一つ「ネコヤナギ」です。

   ネコヤナギは、渓流沿いなどに生育する1~5mほどの低木で、銀色の毛に覆われたふわっとした花穂が猫のしっぽに見えることが名前の由来とされています。庭木などに植栽されたり、切り花にも使われます。今ちょうど、花芽から次々と可愛らしい猫のしっぽが出てきているところでした。   

  ※花穂(かすい)・・・穂のような形の花の集まり

ネコヤナギ.jpg

ネコヤナギ

 ヤナギの仲間は雄雌別株ですので、1つの木には雄花か雌花どちらか一方がつきます。雄花から花粉を出し、雌花は受粉すると種子をつくります。この季節に花粉と聞くだけで、むずむずする人が多いかもしれませんが、一部のヤナギを除きほとんどは虫媒花です。

 種子をつける植物は、花粉を雌しべに届けるために、風や水、虫、鳥など様々な方法を使っており、一般的に花粉症になりやすいのは、花粉の運搬を風に頼っている植物とされています。

 ヤナギの花を見ても虫にアピールするような目立つ花びらはなく地味なのですが、香りと蜜という作戦で虫を呼び寄せています。ネコヤナギなど、葉が出る前に花が出る種は、花が目立ちやすいため、葉と花が同時に出る種に比べると虫を集める効果が高いようです。

 ヤナギは雑種ができやすく、種を見分けるのは難しいですが、雄株か雌株か、葉と花の出るタイミング、どんな虫がやってきているのか、春限定の観察の楽しみです。 

ネコヤナギ場所.jpg

観察日 : 2017年 2月22日(水)

場 所 : スケボー広場周辺、減勢池(大池)周辺

生きもの: キジバト、ムクドリ

記事作成: 横山大将(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)

  

 寒い日が続いたり、急に暖かくなったりする今日このごろ、なかなか昆虫が見つからないため、今回は身近な鳥と、その名前の由来について書きます。

 

 さて、まずは身近な鳥の代名詞と言っても過言ではないハトの仲間、キジバトです。茶色く地味な体色で、「キジ」と「ハト」の名を併せもつ(りゅう)(ちょう)(※1)です。名前の由来は、キジのメスに似た体色と模様からきているようです。

※1(りゅう)(ちょう)とは:年間を通して同じ場所に生息し、季節による移動をしない鳥のこと 

  

 「ハト」そのものの名前の由来はご存知でしょうか?これについては諸説あるようで、漢字の「鳩」は中国語で「キュウ」と発音されるのですが、その発音が鳩の鳴き声「クウクウ」に似ているから「九」+「鳥」でハトになったという説や、羽ばたきの「パタパタ」という音から「ハトハト」→「ハト」になったという説まで様々なようです。

 
  
首を見ると水色と紺色の模様がついていますが、これは大人の証拠。幼鳥にはなかったり、はっきりと模様が出ないので、身近な鳥でもこういった所を見てみると面白いですね。

キジバト.jpgキジバト

 続いては、ムクドリです。スズメとハトの中間ぐらいの大きさで、(くちばし)がオレンジ色、灰色~黒色といった体色の留鳥です。

 

 名前の由来は、一般にムクの木の実を好んで食すことから「(ムク)(ドリ)」になったと言われますが、他にも説があり、ムク以外にも熟した柿やその他幅広い食性を持っているため、大群を形成する様子から「群木鳥(ムレキドリ)」や「群来鳥(ムレキドリ)」が略されたものが由来になったとも言われています。

 

 様々な種類の実を食べ、種子は糞やペリット(※2)として出されますので、種子散布能力がとても高い鳥ともいえます。ときには数万羽の群れとなり、集団でねぐらに戻るため、その周辺地域が糞害にあったり、「ギャーギャー」「ギュルギュル」と大きな声での鳴き交わしの騒音被害にあったりと、社会問題化している地域もあります。しかしこれは、かつてねぐらとしていた防風林や河畔林が少なくなってきたためであり、数自体が増えているわけではなく、小規模な集団ねぐらが増えてきているといった状況にあるようです。

 ※2ペリットとは:鳥が一度食べたものの、消化されずに固まり(羽毛など)にして吐き出したもの

 

 今回は2種でしたが、機会があれば、他の身近な鳥たちも紹介します。みなさんも、身近な鳥たちを名前の由来を考えながら探してみてはいかがでしょうか?

ムクドリ.jpgムクドリ

キジバト場所.jpg

 24()、「新横浜公園四季折々のいきもの観察会」の5回目の観察会が行われました。今年度最後の観察会は「冬の野鳥観察会」です。今回は、新横浜公園に生息する野鳥を観察します。講師は特定非営利活動法人鶴見川流域ネットワーキング(以下、npoTRネット)さんです。

  npoTRネットの阿部さんから双眼鏡の使い方の説明など諸注意の後、観察会スタートです。

双眼鏡の使い方.jpg

 最初に発見したのは「ハクセキレイ」です。芝生の上を尾を振りながら素早く歩く姿に参加者からは「かわいい!」という声が挙がっていました。

ハクセキレイ.jpg

芝生の上を歩くハクセキレイ

 その後、減勢池(大池)沿いを歩いて野鳥を探しました。新横浜公園の北側に位置する大池は、約7.7ha(日産スタジアム芝生ピッチ10面分)の面積があります。水の中に生息する魚や水草が餌となり、その広い水面の周りには、鳥たちが身を隠す草も多いため、冬になると多くの野鳥がやってきます。

観察中.jpg

 水辺で羽を乾かす「カワウ」も観ることができました。カワウは羽に油がなく、水をはじかないため水にもぐるとびしょびしょになってしまうそうです。そのために水から上がった際には、乾かす必要があるそうです!

羽を乾かしているカワウ.jpg

羽を乾かしているカワウ

 しばらく歩いていると、大池の側の草地でイネ科のタネなどを食べている「オオバン」の群れに逢えました。

食事中のオオバン.jpg

食事中のオオバン

 またしばらく歩いていると、タカ科の「ノスリ」を観ることができました。距離があったために写真に収めることはできませんでしたが、参加者からは歓声が上がっていました。

ノスリ.jpg

ノスリ(「新横浜公園生きもの観察日記257」にて紹介)

 観察会が終わった後は、室内でスライドを活用して今回見られなかった鳥の紹介をしました。

スライド説明中.jpg

 今回は、コガモ、オカヨシガモ、ハシビロガモなど冬鳥のカモの仲間や留鳥のアオサギ、カルガモ、ヒメアマツバメなど27種の野鳥を観察することができました。多くの鳥を確認するとともに、その生態について学習することができました。

 27種類観察できました.jpg  この観察会をもちまして、今年度の四季折々のいきもの観察会は終了となりました。ご参加いただいた皆様ありがとうございました。このイベントは、日ごろから新横浜公園の整備業務に関わっている奈良造園土木株式会社様にご協賛いただきました。誠にありがとうございました。

 来年度の予定については、決定し次第ホームページやメールマガジンでご案内いたします。来年度もよろしくお願いいたします。  

カワウほか場所.jpg

観察日 : 2017年 1月26日(木)

場 所 : 減勢池(大池)、草地広場

生きもの: ノスリ、ツグミ

記事作成: 阿部裕治(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)

 今年は酉年ということで、もしかしたら珍しい鳥が観察できてしまうかも!と少し期待して観察しましたが、そうはうまくいかないものですね。それでもなんとか1月らしい日記をお送りしたいと思います。

 まずはノスリ。繁殖期は山地におり、非繁殖期に平地の開けた農耕地などに移動してくるため、新横浜公園周辺では、冬が近づくと飛んでいる姿、留まっているところをよく見かけるようになります。大きさはトビより小さく、カラスくらいの大きさで、ネズミを主食にしています。 

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ノスリ(タカ科)

 続いて冬鳥のツグミ。ツグミがやってくると冬が深まってきたなと感じます。冬鳥の中でも早く渡ってくるコガモなどは、9月には見られ始めますが、ツグミはそれよりやや遅く11~12月以降によく見かけるようになります。食料優先で移動してくるため、その年の果実や種子などの豊作、不作によって、時期は前後するようです。

 写真を撮影した草地広場を見渡して、ちょこちょこと進んではスクッと姿勢良く立ち止まっている、白い眉(眉斑)の目立つ鳥がいたらツグミです。たまに首をかしげるような仕草をしますが、餌となる土の中にいる虫などの音を聞くためにそのような行動をしていると言われています。

DSCN3559.jpgツグミ(ヒタキ科)

 最後は、亀の甲橋から望む富士山です。大山など丹沢山地の後ろに真っ白い富士山がたたずむ姿は、とても迫力があります。この日もきれいな富士山を見ることができました。

 ということで、生きものではない富士山が出てきてお分かりになったと思いますが、茄子はこの時期に公園の中にあるわけはなく、一富士二(タカ)(ツグミ)になりましたが、みなさま今年もどうぞよろしくお願いします。

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亀の甲橋から望む富士山

ツグミ場所.jpg

観察日 : 2017年 1月24日(火)

場 所 : 園内水路

生きもの: ビワコカタカイガラモドキ

記事作成: 横山大将(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)

  年が明け、寒い日が続いていますが、皆さんはどのようにお過ごしでしょうか?私は、末端冷え性に悩まされる日々が続いています・・・。

 さて、新年1発目は、少し不思議な生きものに焦点を当ててみたいと思います。皆さんは、「カイガラムシ」という生きものをご存知でしょうか?ご存知でない方は、どのような生きものを想像するでしょうか。貝?虫?どっちつかずな名前ですが、この生きものは、植物に寄生して植物の師管液を吸って生活する、セミやカメムシに近いれっきとした半翅目の昆虫なのです。

 今回紹介するビワコカタカイガラモドキという種も、半翅目に分類されていますが、皆さんご存知のセミやカメムシとは異なる生活をしています。初齢幼虫に限っては脚があるものの、それ以降の幼虫、成虫は脚が消失してしまい、寄生植物であるアシやツルヨシの葉鞘裏に固着して動かないまま、その場で一生を過ごすのです。しかし、動かないままで越冬するため、冬場の小鳥たちにとっては貴重なタンパク源となっており、しばしばアシの葉鞘を器用に嘴で剥がし、捕食している場面を観察することができます。アシ原の方から「パキッ、パキッ」と枯れ草の茎を折るような音がしたら、小鳥がビワコカタカイガラモドキを捕食しているのかもしれません。ちなみに、名前に「ビワコ(琵琶湖)」と付いていますが、琵琶湖限定のレアな生きものではなく、関東を中心に広い範囲で見られます。

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ビワコカタカイガラモドキ(赤丸内)

 冬場の鳥のエサとして極めて重要なビワコカタカイガラモドキを含むカイガラムシ類ですが、知らず知らずのうちに良くも悪くも、我々人間の生活にも深く関わっています。日頃生活していて、気がついている方はどのくらいいるでしょうか?

 まず、悪い方面ですが、植物に寄生するため、農家の方々からすれば害虫となっており、果樹や野菜に損害を出すことがあります。次に良い方面では、カイガラムシの分泌物を原料に天然樹脂が作られ、レコード盤の材料になったり、ハム等の食品の着色料になったりしています。(虫の苦手な方、すみません。)そんな理由から、海外では、このカイガラムシを養殖しているというから驚きです。

  とにもかくにも、自然界では冬場の鳥たちの命をつなぎ、人間の世界ではところによっては大切に育てられ、我々の生活と密に関わっている、多くの生きものを支える小さな小さな変わった生きものを知ってもらえたでしょうか?カイガラムシの仲間は日本に約400種いると言われており、公園でも多くの種類を見ることができます。きれいなものも多くいます。暖かくなったら探しに行かれてみてはいかがでしょうか?

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ビワコカタカイガラモドキを見つけたアシ原   (アシの葉鞘を剥がすと見つかるかも?)

ビワコカタカイガラモドキ場所.jpg

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