芝生観察日記の第百四話です。
令和二年8月18日(火)
<~ Road to 2019&2020 ~>
あの長梅雨、日照不足が嘘のようです。
毎日暑い日が続いていますが、皆さまお変わりありませんか。
日産スタジアムがある、新横浜公園の温度計では今日で10日連続の猛暑日となっています。
この間、スタジアムの中では最高気温38.4℃を記録しました。
これはさすがに新記録です。明らかに地球環境が変化しているのを実感します。
この猛暑の中でも、連日作業をしてくれるスタッフには感謝しかありません。
さて、先週実施したバーチカルカットから8日が経過しました。
下の写真は、今日の状況です。
バーチカルカットで切られた匍匐茎から新しい芽が誕生し、日増しに密度を増やしています。
後日散布した化成肥料を良く吸収して、セレブレーション本来の濃い緑色になってきました。
人間は夏バテ気味ですが、芝生は猛暑に元気づけられて、どんどん勢いを増しています。
日産スタジアムでは、今回バーチカルカットを行うにあたって議論を重ねましたが、本場アメリカではシーズン中は毎週のようにバーチカルカットを行うらしく、ようやく本来の生育に一歩近づいたような気がします。同時にセレブレーションと従来のティフトン419との生育の差も改めて実感しています。
上の写真左側は、8月8日の試合でできた傷の跡です。そして、右側が今日の状況です。黄色い楕円の中の変化が判りますか。わずか5日間で傷口が芝生で覆われてきました。23日の試合までには判らなくなるでしょう。
元々、サッカーやラグビーなど激しいスポーツで傷んだ後の回復が早いことからバミューダグラスが競技場やスタジアムの芝生として選ばれており、中でもティフトン419は日本において長い実績がある芝種です。甲子園の外野に使われている芝生もティフトン419です。毎夏あれだけ高校野球の試合を連日行っても、芝が持つのはティフトン419ならではと言えます。
そのティフトン419よりも生育が速いのがセレブレーションということになります。
管理してみて新たに気付くこと。学ぶこと。何年やっても勉強の日々です。
次回は試合後の状況を報告します。
今年の梅雨は例年より長かったことで、上手に育つことができなかった植物も多いようです。
農作物も収穫量が少なく、スーパーで売られている野菜も高騰しています。
新横浜公園の花の中にも長雨に負けてしまった植物があります。
中央広場のペチュニアです。
ペチュニアは初心者でも育てやすい花ですが、雨に弱く、長い間強い雨に当たるとしおれてしまう性質があります。
一緒に植えていたペンタスやブルーサルビアはすくすくと育っていますが、ペチュニアは梅雨の長雨と日照不足の影響で枯れてしまいました。
このまま育てても復活できないため、今回、マリーゴールドに植え替えました。
マリーゴールドは夏の暑さに強く、秋まで花をつける植物です。
まだ周りの植物に比べて小さく、控えめに咲いていますが、これから大きくなるよう育てていきます。
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、マスクが手放せなくなっていますが、気温が高い日が続いています。マスクを着用すると喉の渇きに鈍感になり熱中症を誘発する可能性があるため、人と十分に距離が取れる場合はマスクを外し、小まめな水分補給を行うことで、熱中症に注意しましょう。
ペンタス
ブルーサルビア
観察日 : 2020年 8月14日(金)
場 所 : バタフライガーデン周辺、水路周辺、大池周辺
生きもの: ショウリョウバッタ、ハラビロカマキリ、スッポン
記事作成: 横山大将(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)
梅雨が明けたのは良いのですが、急にやってきた異常な暑さのせいで早くもバテてしまいそうです。その反面、セミの大合唱もやっと聴こえてくるようになり夏本番で嬉しい気持ちもあります。
さて、今日は暑さが厳しくなる前の時間帯に観察へ向かいました。とはいえ、朝7時の時点で既に30℃近い気温になっていて、少し動いただけでも汗が吹き出てきます。暑さにはめっぽう弱いので、日陰で小休止しながら観察をしていくことにします。朝の人が少ない時間なので、まずは園路に出てきている生きものはいないか探してみましょう。前方10mほどのところに笹の葉のようなものが落ちて・・・いえ、歩いています!近づいて逃げられてしまっては嫌なので、カメラでズームアップしてみます。シュッとした体型に長い後脚と顔。昆虫図鑑に絶対載っている大きなバッタの仲間、「ショウリョウバッタ」でした。
ショウリョウバッタ(上:♀/下♂・・・雌雄で体格が全く違います。)
上の2枚の写真で上の体格のガッチリしている個体がメス、下の華奢な体格の個体がオスです。雌雄ともによく飛びますが、オスは飛ぶときに「キチキチ」と音を立てるため、「キチキチバッタ」と呼ばれることもあります。体格が大きく違うので別種と思われがちですが、種類を調べるときは要注意です。ショウリョウバッタは漢字で「精霊飛蝗」と書き、お盆の時期に成虫が現れることや、精霊流しで流す精霊船に形が似ていること等が名前の由来とする説があります。確かに、つい先月までは見かけるのはまだ翅(はね)の短い幼体ばかりでした。生きものの名前の由来は調べてみるとなかなか奥が深くて面白いので、みなさんも気になった生きものがいたら是非、調べてみてください!
写真を数枚撮ったところでショウリョウバッタは草むらの方に逃げて行ってしまいました。昆虫にとってもアスファルトでできた園路は暑かったのでしょうか。いつもはこの後大池の方へ向かうのですが、今日は少しルートを変えて水路の方へ向かいました。水路脇から視線を感じたので、上を向いてみるとクワの木の枝から「ハラビロカマキリ」に見られていました。
こちらを覗き込むハラビロカマキリ
樹上性のカマキリとしても知られるハラビロカマキリ。新横浜公園でも夏場によく見かけますが、このクワの木で3年ほど連続して確認できています。お気に入りの場所なのか、人が通っても逃げる気配は全くありませんでした。
ハラビロカマキリとはここでお別れし、大池へと向かいます。観察をはじめて約2時間。気温が上がってきました。スマートフォンで気温を確認すると・・・32℃!?暑い、暑すぎる・・・。ただ、これだけ気温が高くて日差しがあれば、カメたちが甲羅干しをしているかもしれません。カメラ越しに大池の対岸を見てみると、大物がいました!「スッポン」です。
甲羅干しをするスッポン
写真では少しわかりにくいかもしれませんが、シュノーケル状に伸びた鼻に舟のオールのような脚、柔らかい甲羅がスッポンの特徴です。これくらいの大きなスッポンは久しぶりに観察できました。感動しつつも「こんなに暑いのに、よく大丈夫だなぁ・・・」と私はただただ感心するのみでした。
地域によっては40℃を超える気温になる日もあります。新型コロナ対策でマスクは必須となっていますが、熱中症にも十分に気をつけて新横浜公園をご利用下さい!
芝生観察日記の第百三話です。
令和二年8月11日(火)
<~ Road to 2019&2020 ~>
梅雨が明けて連日猛暑が続いています。ここ3日は猛暑日となり危険な暑さです。
皆さんも熱中症には十分注意してください。
そんな猛暑の中でも夏芝は元気です。特にセレブレーションに勢いが出てきました。
今日は、セレブレーションへのバーチカルカット実施状況を報告したいと思いますが、まずは先日行われたJリーグ後の状況です。
試合の結果は、ご存知の通り残念ながら1対1の引き分けでした。サポートしきれていない歯痒さを感じています。。。
そして、試合後の状況ですが、夏芝特有の毛羽立つような細かな傷はできましたが、試合後に転圧して浮き上がった傷口の芝生を押さえつけると目立たなくなりました。サッチング、バーチドレンという更新作業が続いた後だったので影響が出るかなと若干気になりましたが、特に支障はなく、長梅雨の影響から着実に上向いている感じを受けました。
ちなみに当日の表面硬度は、86Gmでバーチドレンを掛けていなかったらどうだったのでしょうか。
次の試合は、23日の広島戦となります。この先は、新型コロナウイルスの影響で試合間隔が非常にタイトです。この2週間という期間は、養生期間であると共に大事な管理作業ができる期間でもあります。
このタイミングで、夏芝にとって大変重要な作業であるバーチカルカットを掛けるのか、掛けないのか。芝生を良くするという目標は同じですが、プロセスにおいてキーパーチームの中でも意見が分かれました。
バーチカルカットについては、このブログの他、「日産スタジアムのスポーツターフ」等にも出てきているので詳細は省略しますが、先日行ったサッチングの更に強い更新作業と理解してください。
夏芝にとって、特にハイブリッド芝と同時に採用されたセレブレーションという新種の夏芝には必然の作業なのです。ただ、これは本場アメリカでの話で、気候が違う日本、特に今年は長梅雨の影響で芝生自体の体力が低下している状況で果たして強い更新作業を行って2週間後の試合に間に合うのかという論点で議論が深まりました。東京2020に向けて一緒にワーキングチームに参加いただいている外部の有識者にも相談しました。
最終的な結論は、「Go!」です。梅雨が明けて本格的な夏となり、セレブレーションは要求量の高い陽光と気温を得たことで急速に勢いを取り戻し、著しい生育が見られることと、この先も猛暑が続く予報を考慮して実施することとしました。
バーチカルを掛けた直後は、細切れになったランナーが表面を覆っていましたが、スイーパーでカスを回収して、刈込みを行った後の状況が上の写真です。ただ、この写真では大したことなさそうですが、実際は結構な荒療治です。
ハイブリッド芝に張り替えて三年。セレブレーションという新種バミューダグラスの特性も少しずつ分かってきました。
天気予報はあくまでも予報であり、近年の気象状況を考えると絶対はありませんが、当てが外れたらどうしよう。と、恐れていては前進しません。
今回は、一昨年アメリカへ視察に行った際、現地のグラウンドキーパーから学んだセレブレーション特有の管理手法を基本として、これまで蓄積してきた経験を信じてトライすることにしました。
今回のトライが、日本の様々な環境要因に適合するのか、試行錯誤の日々です。
今後の状況は、また報告します。
観察日 : 2020年 7月28日(火)
場 所 : 大池、水路など
植 物 : ミソハギ
動 物 : ウチワヤンマ、カブトムシ、ノコギリクワガタ
記事作成: 阿部裕治(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)
8月を直前にして、梅雨が明けそうで明けず、ぐずつく日が続いていました。この日はお昼過ぎまでは曇りの予報でしたが、10時頃に公園に着くとすでに雨がぱらついていました。こんな天気だからこそ、なにか良い生きものに出会えるのではと期待して観察をスタートしました。
園内に入って早速聴こえてきたのは、「ジリジリジリ(アブラゼミ)」、「チーーー(ニイニイゼミ)」という賑やかなセミの鳴き声。こんな天気でもセミの声を聞くと夏を感じます。大池の様子を見に行くと、岸近くの水面上を飛ぶウチワヤンマを発見。腹部の先の方がうちわ状に広がっていることが名前の由来です。思うと最近は、うちわで扇ぐという機会がほとんどなくなってきましたね。よく見ると何か捕まえており、草の先端にとまって食べ始めました。獲物を確認しようと双眼鏡越しに目を凝らしますが、どんどん口の中に入っていったため、よく分かりませんでした。
食事中のウチワヤンマ
夏の昆虫と言えば、カブトムシやクワガタムシですね。大池の野鳥などの様子を見ながら、木も一本一本隈なく探していると、枝の先の方に黒っぽい大きめの生きものを見つけました。立派な角のカブトムシの雄です。写真では、罠に引っかかってそうな感じに見えますが、しっかり枝につかまっていました。子どもがいたら「カブトムシがいたー!」と大声で叫びそうですね。
カブトムシ
バタフライガーデンのそばを通ると、水路にはたくさんのミソハギが花を咲かせていました。湿地に生える多年草で、お盆の頃に咲くことから盆花とも呼ばれ、仏壇やお墓に供える花として有名です。真夏の暑く花が少ない時期には貴重ですね。お供え物などにミソハギに含ませた水をかけるのは、仏様の渇きを癒すためだろうと言われているようです。あまり知られていませんが生薬にもされており、千屈菜(せんくつさい)といって下痢止めや喉の渇きを止めるなどの効果があるようです。
赤紫色の花がきれいなミソハギ
観察も終盤になり、あとは流すように木を確認していこうと、今まではあまりマークしていなかったドッグランそばの木を見ていると、いましたノコギリクワガタ。写真では分かりにくいですが雄の下に雌もいます。ドッグランや第3レストハウス、園路にもたくさん人がいるそばに、灯台下暗しとはまさにこのことですね。
週間天気をみると、ようやく晴れマークが多くなってきました。今度は確実に梅雨が明けてほしいものです。今年の夏の暑さはどれほどになるのか、熱中症には十分注意して新横浜公園の自然観察を楽しみましょう。また、公園内の生きものは園外に持ち出さないようご配慮をお願いいたします。
ノコギリクワガタ