観察日 : 2020年 7月11日(土)
場 所 : バタフライガーデン、大池周辺、第2駐車場ピロティ階段下
生きもの: アオメアブ、シオヤアブ、ハグロトンボ
記事作成: 横山大将(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)
7月ももう中盤に差し掛かろうとしていますが、まだ梅雨は明けず雨の降る日が続いています。長雨の影響で各地の河川氾濫や水・土砂災害の様子が連日報道されています。被災された地域とお住いの皆様におかれましては、一日も早い復興ができることを心よりお祈り申し上げます。
さて、今日は曇り時々雨の予報。雨続きだったので、観察に行くしか無い!と思いお昼過ぎ、公園に向かいました。公園には到着したものの、風がめちゃくちゃ強いです・・・。この感じだとチョウや鳥は厳しそうかなぁ、と考えながらバタフライガーデンに向かいます。植栽されている花を見ながら歩いていると後方から黄色っぽい色をした20mm後半くらいの大きさの虫が飛んできました。「スズメバチか?」と思いましたが、草の茎に止まったその姿を見るとハチとは全然形が違います。大きな眼、短い触角、毛むくじゃらの体。アブの仲間のアオメアブでした。
風に飛ばされないように茎にしがみつくアオメアブ
アブとはいっても、このアオメアブをはじめとするムシヒキアブの仲間は皆さんのイメージするような血を吸うタイプのアブとは違い、コガネムシやハチ、トンボといった昆虫をエサとするアブなのです。残念ながらエサを捕まえる様子は撮影できませんでしたが、公園内ではよく見かけるので機会があればぜひ観察してみて下さい。ちなみにアオメアブ(青眼虻)の名前の由来は、眼が青緑色をしているからだそうです。そのまんまでわかりやすくて良いですね。
あまり近づくと逃げてしまいそうだったので、アオメアブとはここでお別れです。そのまま園路に沿って大池の方へ進みます。大池の周りも随分と草が茂ってきました。そこを歩くと、小さな昆虫がたくさん出てきます。バッタやコオロギの子ども、小型のカメムシやガの仲間、そしてハチ・・・かと思いきや、またムシヒキアブの仲間でした。1日に2度も騙されるとは、なんたる不覚・・・。しかし、先ほどのアオメアブとは少し様子が違います。眼の色が青緑色ではなく、黒っぽいのです。これは、シオヤアブ(♀)のようです。
草の中から出てきたシオヤアブ(♀)
シオヤアブは雌雄の見分け方が比較的簡単なムシヒキアブの仲間です。♀は写真のように腹端が黒っぽくなっていますが、♂は腹端に白い毛束が付いています。♂の白い部分が塩が付いているように見えたことからシオヤアブ(塩谷虻)という名前がつけられたそうです。となると、♀は全然「シオヤ」ではないのでは?・・・まあ、それは置いておきましょう。
なんだか、アブ特集みたいになってしまいましたが、気を取り直して移動してみます。スケボー広場裏の公園からスタジアムへ上る階段の近くに差し掛かった時、トンボが飛んでいくのが見えたので追いかけてみました。フェンスの向こうに行ってしまいましたが、地面に止まってくれたので写真に収めることができました。ハグロトンボです。
ハグロトンボ
イトトンボの仲間と勘違いされることがありますが、ハグロトンボはカワトンボの仲間で、イトトンボよりもかなり大きいです。名前の由来は翅が黒いことから。翅に色がついているトンボって意外と少ないんですよね。公園の横を流れる鶴見川の流域では今から2,30年前、生息数が激減しましたが、最近ではよく見られるようになりました。実際に鶴見川では幼虫(ヤゴ)もよく採れ、繁殖している様子も窺えます。
梅雨明けはもう少し先になりそうですが、生きものたちは着々と夏に向けての準備を進めています。自然観察に行かれる際には、天候と新型コロナ対策を万全にして、ソーシャルディスタンスを保ちつつお楽しみ下さい!
芝生観察日記の第九十九話です。
令和二年7月14日(火)
<~ Road to 2019&2020 ~>
Jリーグ再開後初のF・マリノスの試合が行われました。
試合は残念ながらFC東京に苦杯を喫しました。
当日は、久しぶりに太陽光が差し込む貴重な好転となりましたが、湿度が高く、気温も30℃を超えて猛暑日に迫る汗ばむ陽気でした。しかし、日照不足だった芝生にとっては願ってもない天気となりました。
ちなみに、分かり辛いですが日照不足による影響を受けた芝生とそうでない芝生の比較をみてください。
<6月30日>
<7月12日>
6月末には葉が密集して下地が透けて見えなかったのが、試合当日は葉の密度が減って薄茶色の下地が透けて見え、粗く見えます。我々の業界では下葉を「篩う」とか「落とす」という表現をします。
これは、日照不足で光合成ができないため、芝生自ら生命を維持する手段として体力の消耗を抑えようと、不要な葉を篩い落とした状態です。つまり薄茶色に見えるのは篩い落とされ、枯れ始めた葉なのです。
ぱっと見、2/3くらいに減っている印象です。とはいえ、地下茎と根があるので試合には影響を与えません。そして、スタンドから見る分にはゼブラ模様も出て綺麗でした。
この日、会場の内外で新型コロナウイルス感染症対策が徹底されていました。それは、フィールド内も例外ではなく、選手が触れるゴールポストやコーナーフラッグもスタジアムのスタッフがアルコールで丁寧に消毒を行っていました。
今後、このような光景がスタンダードにならないことを願うばかりです。
選手のウォーミングアップが終わり、いよいよ選手の入場です。暗転からいつも通りのトリコロールギャラクシー。スタンドは1階層のみ、アウェー側のスタンドは開放されず、ソーシャルディスタンスがしっかり確保されていました。そこは、DJ光邦さんの声とアンセム以外聞こえない不思議な空間でした。
当日の芝刈高は12㎜。夏芝を採用しているスタジアムとしては、この時季の平均か、多少短いかもしれません。ただ、Jリーグ発足当初に比べると全体的に芝生の刈高は低くなった印象です。
当日の天候は晴れ、芝生面はドライでした。近年、J1チームの多くがパススピードを上げるため試合前に散水を行っています。
ヨーロッパは勿論、国際試合では当たり前となっていますが、管理上は傷む要因となるので撒きたくないのが本音です。
日照不足で、芝生の密度が減少し、決してベストコンディションではありませんが、冬芝から夏芝へのトランジションを終え、Jリーグの再開に間に合ったということで、一定の手応えを感じました。
試合後のダメージは、バミューダグラス特有の毛羽立つような傷が散見されました。どれも小さい傷ばかりで、丁寧に砂を入れ、刈込みを行ったら殆ど目立たなくなりました。ハイブリッド芝ということもあり、凹みもありませんでした。
次の試合は、22日の横浜FCとのダービーです。
天候さえ安定してくれれば問題なく回復するのですが、この先の天気を見ても厳しそうな予報です。
日照不足によるストレスを緩和させるサプリ等を撒きながら梅雨明けを祈りたいと思います。
本来であれば後10日で東京2020が開催される予定でした。近年の天候を考えるとピンポイントで芝生のコンディションを整えることの難しさを実感しています。
来年の夢舞台を最高の状態で迎えられるように思考錯誤は続きます。
芝生観察日記の第九十八話です。
令和二年7月10日(金)
<~ Road to 2019&2020 ~>
いよいよ日産スタジアムにF・マリノスが帰ってきます。
一昨日の湘南ベルマーレ戦では、勝率の良いニッパツ三ッ沢球技場で今季初勝利を飾りました。
その勢いをそのまま明後日のFC東京戦でも発揮してくれることを期待します。
我々ができることは、選手達が安心してプレーできる環境を整えることです。一昨年ハイブリッド芝へ張替えた後、チームからは常々グラウンドの硬さを指摘されてきました。
芝生の弾力は、確かに選手の膝や腰、足首などの怪我に影響するため硬いという印象だけで安心してプレーに集中できないという側面があります。
グラウンドの硬さを和らげる手段として、これまでもバーチドレンを掛けるなど、その都度対応してはきましたが、選手が望む弾力をなかなか提供できませんでした。
そのため、今年は芝生自体が生み出す弾力を確保するため、冬季からコア抜きのエアレーションを繰り返し実施してきました。これが功を奏して、天然芝本来の弾力が生まれました。
コア抜きのエアレーションで芝が良くなるなら早くやれよと思うかもしれませんが、ハイブリッド芝のNGワードであるため分かってはいても躊躇していました。
また、今年は、新型コロナウイルスの影響でJリーグが中断したことで、不幸中の幸いと言って良いのか十分な養生期間が確保できたため冬芝から夏芝へのトランジションも完了し、芝生自体のコンディションは近年にない状態に仕上がっています。
スポーツグラウンド(スポーツターフ)の硬さは、その競技毎に求められる基準が違います。選手個人もそれぞれ好みが違うため、我々は何を基準として硬さを調整しているかと言えば、英国スポーツターフ研究所(STRI)が開発した「クレッグ・インパクト・ソイルテスター」という表面硬度を測る計測器の数値を基準としています。
これは、500gのウエイトを30cmの高さから落とす減速度を測定します。1地点5回測定し、その平均値を見るのですが、STRIでは望ましい基準値を20-80Gmとしています。粘土質が多いヨーロッパと日本やアメリカなど砂質が多い環境では開きがあります。
日産スタジアムでは、ハイブリッド芝にする前は70-80Gmで安定していたのですが、ハイブリッド芝にしてからは、100Gm付近を行ったり来たりしており、基準値をオーバーしていました。
明後日の試合に向けて、最後の仕上げとして実施したバーチドレン後に表面硬度を計測しましたが、今回は60-70Gmで基準値内でした。ハイブリッド芝に変更後、60Gm台が出たのは初めてですが、確かに軟らかく感じます。
ここまでは我々がイメージした通りに仕上がっていたのですが、悩ましいのがお天気です。7月に入ってからまともに太陽が出ない状態で、連日の雨も重なり夏芝にとって大変厳しい状態が続いています。
梅雨入り後、比較的晴れる日が多く、順調な生育を見せていた夏芝もここへ来て生育が低下しており病気の再発が気になります。
今年は、Jリーグの中断でどこのスタジアムも万全の状態で、綺麗な緑の絨毯をイメージされている方が多いかもしれませんが、今年は芝生泣かせ、そして管理者泣かせの難しい年となりそうです。
まずは、明後日の試合に勝つことを願うのみです。
次回は、試合後の状態を報告します。
新横浜公園東ゲート橋(通称:Aアプローチ)のハンギングバスケットの花が新しくなりました。
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、中断していたJリーグがようやく再開し、日産スタジアムでは、7月12日の横浜F・マリノス vs FC東京戦が、再開最初の試合になります。
当面の間は、人数制限を設けての開催となりますが、少しでも会場を盛り上げるよう、ハンギングバスケットに植えた花の色は青・白・赤の三色(トリコロールカラー)です。
青(ペチュニア)
白(ニチニチソウ)
赤(ペンタス)
植えた直後で、まだ花は少ないですが、これから花の数を増やして鮮やかになっていきます。
その他に、長いツルを伸ばすヘデラも一緒に植えてあります。
新横浜駅から日産スタジアムに来場するときは多くの方が通行する東ゲート橋。
皆さまのご来場をお待ちしております。
観察日 : 2020年 6月23日(火)
場 所 : 大池、水路など
植 物 : ヒメガマ
動 物 : ヤブキリ、アオダイショウ
記事作成: 阿部裕治(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)
しとしと雨が降るぐずついた日が続きますね。久しぶりに梅雨らしい天気を感じていますが、みなさんはいかがでしょうか?観察に出向いたこの日は、曇り空で時折晴れ間が出るとジワッと蒸し暑くなるような天気でした。
投てき練習場周りから観察をスタート。水辺に生えるヒメガマの穂を見ると、おしべがたくさん集まっている上の穂(雄花穂・ゆうかすい)が黄に色づいていました。これを見ると、花粉の具合はどれほどか、つい握りたくなってしまいます。握るとご覧のとおり、黄色いチョークを触ったかのように手が真っ黄色になります。この花粉は蒲黄(ほおう)と呼ばれ、古くから止血剤や利尿薬として用いられています。古事記の因幡の白兎で怪我を負ったウサギが傷を治すために使ったのが、ガマの花粉と言われています。
ガマと聞くとソーセージのような穂を思い浮かべる人が多いでしょう。これは雌花穂(しかすい)で、雌花が密集しており、秋になると綿毛の種子がびっしり詰まった状態になります。
ヒメガマ
雄花が集まった穂を握ると花粉がたくさん
水路沿いを歩いていると、オギやアシなどが高く生えている草地から「シュルルルル」という鳴き声が多く聴こえてきました。鳴き声の主は、キリギリスの仲間のヤブキリです。写真を撮ろうと探してもなかなか見つからず。ようやく撮影できたのは、多目的遊水地の越流堤の入口付近でした。(地図赤丸)遊水地の堤防法面の草地でもたくさん鳴き声が聴かれました。
ヤブキリの鳴き声が聴こえる水路の草薮
クズのつるの中で見つけたヤブキリ
ヤブキリの写真を撮影後、戻りながら再度観察していると、水路の浅い流れをうねうねと這い進むヘビを発見。双眼鏡で確認するとアオダイショウでした。日本の固有種で、北海道から吐噶喇列島(とかられっとう)まで広く分布しています。ヘビというと毒が気になると思いますが、本種は無毒です。流れの上手の方に向かって岸辺の様子を気にしながら進んでいったため、カエルなどの餌を探していたのかもしれませんね。
来月から7月に入り、夏が本番です。コロナウイルス対応でマスクの着用が大切ですが、熱中症にならないよう十分に注意しましょう。
アオダイショウ