観察日 : 2018年 10月25日(木)

場 所 : 周囲堤スロープ下、大池

生きもの: アキアカネ、ハシビロガモ、オカヨシガモ、コガモ

植 物 : ソメイヨシノ

記事作成: 阿部裕治(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)

 

 9月中旬に大池で見られたカモは、カルガモとコガモの2種でしたが、10月に入り、種類が増えてにぎやかになってきました。今日はどんなカモに会えるか期待して大池に直行する気持ちでしたが、すぐに足が止まってしまいました。

 

 そこにいたのはトンボの大群!遊水地の堤防の下の方から水がしみ出ているわずかな場所で、オスメス連結した30ペアほどトンボが腹部の先を「ちょんちょん」と水につけて産卵していました(打水産卵)。その様子を写真に撮っていると、私の太ももでガサガサっと音が。トンボから当たってきてくれて、網がなくても捕まえることができました。トンボの正体は、アキアカネ。稲刈り後の田んぼのような場所を産卵環境として好み、卵で越冬して春に孵化します。幼虫は水中で暮らし、羽化した成虫は、夏場は涼しい山で過ごして、秋になると山を降りて産卵を行います。産卵は湿っている場所や水たまりなのですが、中には間違えて舗装路に産卵するペアもいてかわいそう。水路で産卵したアキアカネたちは、無事に成虫になってもらいたいですね。

201810月ブログ②_1.jpgアキアカネ

201810月ブログ②_2.jpg産卵していた場所

201810月ブログ②_3.jpgここに写っているだけでも9ペアが産卵

 

 大池に到着。対岸のアシやガマの根本にはお馴染みのコガモやカルガモが見られ、水面にはハシビロガモが多くいました。下の写真はオスで羽が生えかわってきているため、色合いの特徴が出てきていますが、一番分かりやすいのは、大きくて幅の広い嘴です。間近で「いないいない ばぁ~!」をされたらちょっと怖いですね。

 

 しばらく観察しているとオカヨシガモが2羽、コガモとともにやってきました。オカヨシガモは今シーズン初観察で、おそらく幼鳥かと思われます。

201810月ブログ②_4.jpgハシビロガモのオス

201810月ブログ②_5.jpgいないいない     ばぁ~!

201810月ブログ②_6.jpgオカヨシガモ(中、右)とコガモ(左)

 

 大池のカモを観察しながら投てき練習場の方にまわってくると、サクラが咲いていました!こんなところにサクラがあったとは、咲いていなかったら気づかなかったかもしれません。ニュースでも台風の影響で葉を落としてしまったサクラが開花していることを放送していましたが、このサクラも葉がついていなかったため、葉から出る休眠ホルモンが届かなくなって開花したのでしょう。

 

 今回は大収穫!ペアになって産卵している多数のアキアカネや、越冬しに渡ってきたハシビロガモとオカヨシガモ、季節外れの桜。素敵な出会いの1日でした。

201810月ブログ②_7.jpg人知れずひっそり咲いていたソメイヨシノ

アキアカネほか場所.jpg

麻生養護学校元石川分教室植栽実習

 今年2回目の麻生養護学校元石川分教室インターンシップ実習を10月17日に受け入れました。

 実習の受入れ趣旨に賛同していただきました株式会社サカタのタネ様より、花苗(ビオラ)600ポットのご提供をいただき、新横浜公園中央広場10箇所の花壇の植替え及び落ち葉清掃作業を実施しました。

 今回も日産スタジアム運営ボランティア(グリーン&クリーン部会)の6名の方々にも実習のお手伝いをいただきました。

 最初に、生徒さんから朝のご挨拶をいただき実習をスタート。

 2018麻生養護実習_1.jpg

 日産スタジアム運営ボランティアさんによる花植え指導のもと生徒さんにビオラの植え付けをしていただきました。

2018麻生養護実習_2.jpg2018麻生養護実習_3.jpg

 ビオラにたっぷりのお水をあげました。

2018麻生養護実習_4.jpg

 花壇2箇所に協力看板を設置して公園利用者の皆さまに活動の周知をしています。

2018麻生養護実習_5.jpg

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 中央広場の落ち葉清掃をしていただき、60ℓゴミ袋10個分の落ち葉を集めていただきました。 2018麻生養護実習_7.jpg

 生徒さんが丁寧に植え付けてくださったビオラは中央広場でご覧いただけます。

 また、新横浜公園には、他にもいろんな種類の花や樹木が植えられています。是非そちらも一緒にご覧になってください。

 麻生養護学校元石川分教室の皆さん、ありがとうございました。

2018麻生養護実習_協賛.jpg

 

 

芝生観察日記 第84話

芝生観察日記の第八十四話です。

平成30年10月29日(月)

<~ Road to 2019&2020 ~>

 

 10月27日(土)、来年のラグビーワールドカップに向けて最後のテストマッチと位置づけられた「キヤノン ブレディスローカップ2018」が開催されました。

 それは、舞台の中心となる芝生にとっても大きな意味合いを持ちます。今年6月に張り替えたハイブリッド芝が世界レベルの屈強な選手たちにどれだけ通用するのかを計る最高の場となりました。

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1029-3.jpg<6月 キリンチャレンジカップ>

 

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  <ブレディスローカップ>

 今回の試合では、来年に向けて、様々な組織、部署による課題の抽出や試験が行われましたが、我々芝生部隊としてはハイブリッド芝の状態と共にフィールド外周の周辺区域を天然芝で拡張するというミッションがありました。

 昨年行われた日本代表vsオーストラリア代表の試合は、ティフトン419のビッグロールで周辺区域を拡張しましたが、今回は来年の本番を見据えてインゴール部分にはフィールド内と同仕様のハイブリッド芝を採用しました。また、降雨により水溜りができないように排水対策も講じています。その甲斐あって、今朝方に降った雨でも水は溜まらず、一つのミッションにおいて成果を確認できました。

 また、上の写真は、6月に行われたサッカーの日本代表戦時の状況と今回の状況比較です。サッカーの場合は、フィールドの周辺区域は全て人工芝ですが、ラグビーの場合は規定の周辺区域は天然芝で拡張し、その周りを人工芝で拡張しているため少し雰囲気が違います。

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1009-6.jpg   今回の試合に向けた準備作業もワールドカップ組織委員会より提示されたマニュアルに基づき、本大会仕様のゴールポストやライン、そして芝の刈高やカットラインで仕上げました。

 また、本大会に向けて組織委員会では、各会場の芝生が激しい使用に耐えられるのかを確認するため、イギリスの調査会社による「スコアプレイ」という芝生の調査が行われました。芝生の強度やグラウンドの硬さ、排水性など20項目に及びます。結果は、全ての項目で基準値をクリアしましたが、課題も見つかりました。この調査の結果を見て、試合時のダメージが目に浮かびました。 

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1029-8.jpg  

  そして試合の方ですが、国内で開催されたラグビーの試合における最多入場者数46,143人の観衆が見守る中で、世界最高レベルの試合に場内は大いに盛り上がりました。結果は、今年度のブレディスローカップを既に保持しているニュージーランド代表が37対20でオーストラリア代表に勝利して、3連勝という形でノーサイドとなりました。

 試合後のフィールドは、スコアプレイのデータからも想像がつきましたが、ハイブリッド化したことで深く抉れるような傷はなく、表面の芝生が削り取られるような傷が散在しました。

 要因としては、天然芝の根と人工芝パイルの絡み合いが甘かったようです。ハイブリッド化のタイミングで芝種がティフトン419からセレブレーションに変わったことで一年という短期間で張り替えることができたので、いくつかの課題が見つかり、逆に張替えが来年でなく、今年で良かったという感覚もあります。これから一年掛けて日産スタジアムの環境に適応させていくことが今後の課題です。

 試合後、両チームの選手からは、「ピッチのおかげで、私たちが求めている速い展開のラグビーが可能になった」、「ピッチは世界一級品だと思う」などハイブリッド芝への賛辞がありました。

 我々的には選手の感覚とは裏腹で荒れたフィールドに懸念を抱いていましたが、少しばかり救われた思いと共に、本大会までにはベストな状態に仕上げるという強い決意が沸いてきました。

その前に今週末のJリーグに向けて回復させることが先決です。選手に迷惑はかけられませんから。

 「新横浜公園四季折々のいきもの観察会」(協賛:株式会社春秋商事)の4回目の観察会を開催しました。

 今回はNPO法人 鶴見川流域ネットワーキング(以下npo TRネット)代表理事であり、慶応義塾大学名誉教授でもある岸由二先生による「外来種とどうつきあうか」がテーマの講義です。

2018いきもの観察会④_1.jpg岸由二先生

  昨今、盛り上がりを見せている「外来種問題」についてお話いただきました。外来種問題とはそもそも何なのか。世界や日本、特に鶴見川流域、新横浜公園での現状についてお話いただきました。以下、岸先生の講義をご紹介いたします。

 

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 外来種とはそもそも何なのか、について世界的な統一見解はありません。日本では、「明治時代以降」に、もともとその地域にいなかったのに人間の活動によって他の地域から入ってきた大型の動植物を対象として、特に注意すべきものを特定外来生物に指定し、飼育・販売・もち運び等を規制する外来生物法が施行されています。

 

 外来種は「危険」という考え方が先行しており、まるで外来種の全てに罪があるかのように言われてしまっています。外来種を徹底的に排除することこそ正義とするような理解のされかたをするのは果たして正しいあり方なのでしょうか。固有種の生息や生態系に有意な影響を与える外来種は、排除、コントロールすべきものですが、そうでない外来種もふくめて、一律に全て排除の対象とするのは、効果に関しても、また、必要な経緯や労力の点でも適当でないと私は考えます。

 

 在来生物に影響を与える外来種は、排除するだけで有効活用できないのでしょうか。特定外来種として有名なブラックバスやブルーギルは、今は持ち運びも、取引も法律で厳格に禁止されていますが、もとは水産資源として導入された歴史がありました。

2018いきもの観察会④_2.jpg新横浜公園にいたブルーギル(2018いきもの観察会①にて)

  ミシシッピアカミミガメもスッポンが当たり前に食べられているように、食糧として考えることもできるかもしれませんね。

2018いきもの観察会④_3.jpg新横浜公園にいたミシシッピアカミミガメ(2017いきもの観察会③にて)

 新横浜公園にはどのくらい外来種がいるのでしょうか。

 新横浜公園にある植物はnpo TRネットの調査(2016-17年度)によると「204種」、そのうち外来種は「72種」でした。(実に35%が外来種ということになります!)

 

 植物を通してみても、在来種ばかりでなく多種多様な外来種があることがわかります。新横浜公園では、外来種をすべて排除するなどということを目標とするのではなく、オギやアシなどの在来の植物を中心とする群落の回復・創出ならびにそこに暮らす生きものとの多様性を重視する多自然型管理を行なっています。その回復作業にとって妨害となる植物は、外来であれ(セイタカアワダチソウやアレチウリなど)、在来種(ツルマメ、カナムグラなど)であれ、排除する作業をすすめています。

 

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 実際に新横浜公園ではどのような管理を行なっているのでしょうか。npo TRネット阿部さんにガイドして頂き、園内の水路へ向かいました。

2018いきもの観察会④_4.jpg多自然型管理を行なっている水路

  水路の一部では「神奈川県絶滅危惧Ⅱ類」(貴重な鳥とされています)に指定されているオオヨシキリの繁殖を目指しています。オオヨシキリが住みやすいようにアシを維持・回復させながら、それらに影響を与えるアレチウリなどの除去を行なっています。

2018いきもの観察会④_5.jpg水路に生えているアレチウリ 


  こうした努力が実を結び、先日オオヨシキリの巣を確認することができました!

2018いきもの観察会④_6.jpgオオヨシキリの巣(2018927日撮影 提供:npo TRネット)

 その後、参加者からは様々な質問・議論が交わされ、みなさまの生物多様性に対する関心の高さを伺うことができました。

 

 この四季折々のいきもの観察会は年間で全5回行われる予定です。次回は5 野鳥と冬越しの虫観察&クリスマスリース作りを予定しています。是非ご応募ください!!

観察日 : 2018年 10月18日(木)

場 所 : スケボー広場周辺、園内水路付近

生きもの: キマダラカメムシ、オオカマキリ、コカマキリ、ツマグロヒョウモン

記事作成: 横山大将(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)

 

 肌寒い日が続き、徐々に冬が近づいてきているのをひしひしと感じます。今日も肌寒く、曇り空のためか、元気に飛び回っている昆虫は見られませんでしたが、日が当たっているところで体を温めている昆虫たちがいました。今回は、その一部を種類の見分け方とともにご紹介していきたいと思います。

 スタジアムから公園に続く階段を降りてすぐのところにメタセコイアの木が立ち並んでいます。その根元近くにグレーに赤い点々模様のこの昆虫がいました。

DSCF3674_キマダラ幼虫.jpgキマダラカメムシ(幼虫) 

DSCF3690_キマダラ成虫.jpgキマダラカメムシ(成虫)

 温暖化の影響なのか、最近関東地方でも見られるようになってきたカメムシの仲間で、「キマダラカメムシ」といいます。新横浜公園がある港北区をはじめ、鶴見区や川崎市でも見かける機会が増えています。幼虫は地味な色合いですが、成虫になるとその名の通り黄色いまだら模様になります。他にも似たような色彩を持つカメムシは存在しますが、この辺りで見かけるのは、ほとんどがキマダラカメムシです。ちなみに、このキマダラカメムシも危険を感じると臭いにおいを出しますので、あまり刺激を与えるのはお勧めしません。見かけてもそっとしておいてあげるのが虫にも人にも平和的かと思います。

 園内を歩いているうちに、わずかではありますが日が出てきました。草の茂っているあたりに目を向けてみると、中型のチョウが花の蜜を吸いに来ていました。

DSCF3705_ツマグロ♀.jpgセイタカアワダチソウで吸蜜するツマグロヒョウモン(♀)

 メスの(はね)の先端が黒いことから「端黒豹紋(ツマグロヒョウモン)」という名前が付けられたタテハチョウの仲間です。オスは翅の先端もオレンジ色です。幼虫は、パンジーやビオラといったスミレの仲間を食草とするため、ガーデニングをされる方からは嫌われてしまっています。本州には他に似たような色彩のチョウはいないので、慣れてくると飛んでいる姿でも見分けがつくくらい特徴的で美しいチョウです。

 ツマグロヒョウモンが吸蜜をしているすぐそばでは、2種類のカマキリが日向ぼっこをしていました。

DSCF3696_オオカマ.jpgオオカマキリ

DSCF3698_コカマ.jpgコカマキリ

  「オオカマキリ」は、日本に生息するカマキリ類では最大クラスの種類で、後翅に赤紫色の飛沫模様があるのが特徴です。反対にコカマキリは、この周辺で見られるカマキリ類の中では最小クラスのかわいいカマキリで、前脚に黒と桃色の腕輪模様があるのが特徴です。どちらの種類も緑系と茶色系の体色のものが存在しますが、これらの特徴が分かればなんという種類かすぐに判別できます。

 これから、どんどん気温が下がり、冬がやってきます。体調には充分に気を付け、フィールドワークをお楽しみください!

ツマグロヒョウモンほか場所.jpg

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