観察日 : 2016年 7月30日(土)
場 所 : 園内水路(1-a号水路)
生きもの: マメコガネ、アオドウガネ
記事作成: 横山大将(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)
夏の昆虫と聞いてカブトムシを思い浮かべる方は多いと思います。カブトムシはコガネムシ科に分類される大型の昆虫で、子どもたちにとっては夏の風物詩ともいえます。ですが、カブトムシばかりが有名になり他のコガネムシの仲間はあまり知られていません。そこで、今回はよく見られるコガネムシ科の昆虫2種類をご紹介していきたいと思います。
まずは、マメコガネです。日本全国に分布する体長8~15mm程度の小型コガネムシです。マメ科植物やブドウ、モモ等の葉を食い荒らすため、農家からは嫌われています。1916年にはアメリカに侵入した個体が発見され農作物を食い荒らしてアメリカの農業に甚大な被害を与えました。現地では「ジャパニーズビートル」と呼ばれ駆除の対象になっています。
続いては、アオドウガネです。北海道以外の日本全国に分布する体長18~25mm程度の中型コガネムシです。山地から都市部まで幅広く見られる昆虫で、主に植物の葉を食べます。よくカナブンと間違えられますが、こちらのほうが若干小さく、全体的に丸みを帯びています。もともとは南西諸島に多く見られたようですが、最近北上し、生息域を広げているようです。
今回ご紹介したコガネムシの仲間は新横浜公園内水路脇の草地等で見ることができますので、ぜひ探してみてください。
カブトムシ♀(別日に確認)
マメコガネ
アオドウガネ
カナブン(別日に確認)
7月23日(土)、「新横浜公園四季折々のいきもの観察会」(協賛:奈良造園土木株式会社)の2回目の観察会が行われました。
今回は「セミの羽化と昆虫トラップ観察会」と題し、セミが羽化する様子と事前に仕掛けたトラップ(罠)に集まる昆虫たちを観察しました。全5回の観察会のうち、唯一夜に行われる観察会です。
まずは、教室でスズメバチに遭遇した時の対処法など、自然を観察するときに大切なお話がありました。昆虫トラップ観察の際には、赤いフィルムなどを使用し、昆虫には見えない赤い光にてハチがいないかどうか安全確認をする説明がありました。
次に、公園内での観察会です。まずは、セミが羽化するポイントに行きました。時間は18時半すぎ。日が落ちていないためまだ明るく、セミが羽化するには少し早い時間です。そこで、最初はセミの抜け殻探しを行いました。
今回集めたセミの抜け殻はほとんどがアブラゼミでした。新横浜公園で最も多く見られるのがアブラゼミだと納得できます。木を上っている幼虫が5~6匹見られ、羽化の期待を持ちつつその場を離れました。
続いて、新横浜公園内を歩いて移動しながらの自然観察会です。ヒシなど、今回のテーマであるセミと昆虫以外の話も聞くことができました。先日の大雨により、中身の少ないヒシの実が多く水際に上がっていました。ゆでると、栗のような味がするそうです。
ヒシの実について説明中
そして暗くなった頃、事前に仕掛けた昆虫トラップを順番に回りました。今回はカブトムシのメスとコクワガタ、ヤブキリ(キリギリス科)のメスなどを見つけることができました。カブトムシが見つかると歓声が上がりましたが、今回の観察会では、オスは見つかりませんでした。
昆虫トラップ観察中
コクワガタのオス
カブトムシのメス
ヤブキリ(キリギリス科)のメス
完全に暗くなった20時頃、セミの羽化を観に行きました。木に止まったセミの背中から成虫が出る様子が観察できました。参加者からは「すごい!」「がんばれ!」との声が挙がりました。
セミの羽化観察中
木を登ってこれから羽化しようとするセミも多くいました。セミの羽化の観察が子どもたちの夏休みの思い出として残ってほしいと思います。
最後に、教室に戻り、今回仕掛けたトラップの作り方を教えていただきました。材料はバナナ・ドライイースト・焼酎です。ベランダなど暖かいところで半日ほど発酵させて作ります。これでみんなも昆虫が集まるトラップを作れますね。
次回の四季折々のいきもの観察会は9月19日(月祝)開催です。この日は、慶應義塾大学名誉教授の岸由二先生を特別講師にお迎えしてバッタとりなどの自然観察と新横浜公園の生きもののにぎわいについての講演を行います。皆様のご参加をお待ちしております。観察会の様子はまた、ブログで紹介します。
この「新横浜公園四季折々のいきもの観察会」は年5回の観察会を予定しており、奈良造園土木株式会社様にご協賛いただいています。また、鶴見川流域ネットワーキングさんに講師を依頼しています。
今回観察会のために特別にトラップ設置を行いましたが、普段は無断でのトラップ設置は禁止となっております。また、公園内で捕まえた昆虫は放してあげるなどの配慮をお願いいたします。
観察日 : 2016年 7月28日(木)
場 所 : 園内水路(2号水路)
生きもの: キアゲハ
記事作成: 阿部裕治(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)
キアゲハ
北川園地の水路を観察していると、ひらひらと1匹のキアゲハがやってきて、セリの花にとまり体をくの字に曲げては、また隣の花へ移動していました。よく見ると大きな幼虫が、1匹、2匹、3匹、4匹! 中くらい(4齢)の幼虫も3匹見つかり、ほとんどはお休みでしたが、2匹はむしゃむしゃお食事中でした。 成虫がとまっていた花を見てみると産んだばかりの卵も4個見つけることができました。
キアゲハは、セリ科の植物を食草としており、5月の観察日記238ではハナウドに幼虫がいましたが、今回はセリにやってきていました。セリは夏が花の時期で、白い小さな花をたくさん咲かせます。公園内の水路にたくさん見られるのですが、この時期になるとヒメガマやヨシなどに覆われてしまいほとんど目立ちません。ここは少し開けていてお母さんキアゲハも見つけやすかったのかもしれませんね。
セリキアゲハの卵
終齢(5齢)幼虫
観察日 : 2016年 6月23日(木)
場 所 : 園内水路(6号水路)
生きもの: ケラ
記事協力: NPO法人鶴見川流域ネットワーキング
ケラ
「オケラ」と聞いてピンと来る方はいるでしょうか?少なくとも皆さん名前は聞いたことがあると思います。どこで聞いたのか?最も一般的なのは童謡「手のひらを太陽に」ではないでしょうか。「ぼくらはみんな生きている~ 生きているから歌うんだ~♪」のあの童謡です。その1節の「ミミズだって オケラだって アメンボだって」に登場する生きものです。最近では生息環境が減り、出合う機会がめっきり少なくなった生きものでもあります。では、本物はどんな生きものなのでしょうか?
ケラは、ケラ科に分類される、大きく分けるとバッタに近い昆虫です。普段は、田んぼの畦や水路脇の地中で暮らしています。ですが、見た目はとてもバッタには見えません。その原因は、地中で暮らすのに特化した前脚にあるかもしれません。ケラは穴を掘り暮らしているため、前脚がモグラの前脚のような形をしています。体の形も丸っこく、モグラのようです。ただ、はねがあるという点ではしっかり昆虫として見ることができます。それから、バッタの仲間ということで、コオロギのように翅を擦り合わせて鳴くこともできます。田んぼや水路の周辺で「ジー・・・」とか「ビー・・・」と聞こえたら、それがケラの鳴き声です。もしかしたら足元にいるのかもしれませんね。
最後に、私が思うケラの一番すごいと思うところを紹介します。それは、上記のように地中にもぐるだけでなく、水陸両用で、かつ空中も飛べるというオールマイティーなところだと思います。生息場所、前脚の形等々、他の昆虫と比較すると特異な性質を持っています。
マイナーで奇妙な昆虫ですが、この記事を読んでケラを知ったという方が1人でも増えてくださると嬉しいです。
観察日 : 2016年 6月19日(日)
場 所 : 北側園地 上空
生きもの: セッカ
記事協力: NPO法人鶴見川流域ネットワーキング
セッカ チガヤの穂
公園を散歩していると上空から「ヒッ、ヒッ、ヒッ、ヒッ・・・」という声が聴こえてきます。気がつかないと横断歩道の音と思ってしまうかもしれませんが、これはセッカという鳥の声。オスのさえずりで、上昇しながら「ヒッ、ヒッ・・・」下降しながら「チャッ、チャッ・・・」と鳴きます。
セッカは、草原など開けた場所で昆虫やクモなどを食べて暮らしているスズメほどの大きさの鳥です。巣は、草地の中で葉をクモの卵嚢からとった糸でつなぎあわせて作ります。チガヤなどの穂も利用するため、とてもフカフカで気持ちよさそうです。新横浜公園では繁殖期にチガヤの穂が見られるため、利用していると思われます。
神奈川県では、生息地が減少してきており、繁殖期・非繁殖期ともに減少種に指定されています。開けた草地環境を象徴するセッカが、これからも暮らしていけるような新横浜公園であってほしいですね。
※セッカは、これまでウグイス科に分類されていましたが、2012年の日本鳥類目録第7版の改訂でセッカ科となりました(日本でセッカ科は、本種のみ)。