芝生観察日記の第七十二話です。
平成27年12月28日(月)
「FIFAクラブワールドカップジャパン2015」の熱戦から8日が経過しました。
リバープレートの熱いサポーターの応援に、コンサート並みにスタンドが揺れ、身震いするほどの刺激を受けました。そして、FCバルセロナの優勝に熱く燃えて大会が幕を閉じました。
開催国を代表して参加したサンフレッチェ広島が世界3位という輝かしい結果を残したことも大会全体を大きく盛り上げた要因だと実感しました。広島のみなさん本当におめでとうございます。
来年は是非、我らがF・マリノスに同じ舞台に立ってもらいたいと切に願っています。
さて、2015年最後の利用を終え、芝生も来年に向けた暫しの養生期間に入ります。
10日間の大会を終えた芝生は各所で傷みが目立ちます。
写真はゴール前の状況です。大会期間中に何度も張替えようとスタッフ内で議論しましたが、大会中は思った以上に芝生管理に充てる時間がありませんでした。そのため、誤魔化しながら公式練習や試合を乗り切りました。それでも、選手やFIFAのGCからは「GoodJob」の連発で、我々の思いとは裏腹に想像以上の芝生の評価をいただきました。
今年は、春から低温、日照不足、長雨、猛暑日など等、異常気象と言われる天候続きで芝生管理をする上では難しい一年でした。Jリーグのシーズンを終えて、短い時間でクラブの世界一を決める舞台を整備するのは非常にデリケートな管理が求められました。
そして、関係者を始め、多くの方の理解と協力をいただきながら何とか無事に大会を成功させることができました。ここで皆さまに感謝するとともに、また来年も最高の舞台づくりに精進していく覚悟です。
今年一年間、ありがとうございました。
また、来年も日産スタジアム、芝生観察日記をよろしくお願いします。
新横浜公園フォトギャラリー12月度更新ブログです。
新横浜公園の落葉樹はほとんど落葉し、寒さも厳しくなり冬を感じるようになりました。今月も新横浜公園で撮影した写真を更新したのでご紹介します。
1枚目の写真はM.Sさんにご投稿いただきました。ご投稿ありがとうございます。写真タイトルは「雨の切れ間に出た虹」です。
11月26日。この日は、前日の夜から降り続いた雨が午前中に上がり、大きな虹がかかりました。草地広場からその瞬間を撮影した写真です。
2枚目の写真は「青々とした芝生」です。
9月下旬に播いた冬芝が育ち、クラブワールドカップジャパン2015開幕直前の12月6日に撮影した写真で、ようやくグラウンド一面が冬芝で青々としてきました。芝生観察日記でも書いた通り、世界の名選手たちがこの芝生でプレーしていきました。
今回のフォトギャラリーは、この2枚の他にも、全部で8枚の写真を更新しています。秋を感じられる本格的な紅葉の写真などです。フォトギャラリーリストを見て、是非新横浜公園にお越しください。
芝生観察日記の第七十一話です。
平成27年12月20日(日)
「FIFAクラブワールドカップジャパン2015」も今夜FINALを迎えます。
10日から始まり、10日間で4試合。正直言って冬季間に公式練習も含めると6日間の使用は大変厳しいものがあります。
昨夜、FINALでぶつかるリバープレートとFCバルセロナが公式練習を行ないました。両チームとも軽めの調整程度だったため芝生のダメージも想定内で済んだのでホッと胸を撫で下ろす気分です。
それでも、今朝の最低気温は0.4度。この冬一番の冷え込みとなり、芝生表面に軽く霜が降りました。セレモニーのリハーサル等との時間の取り合いもあり、大事な一戦に向けての作業も限られたものとなりました。
芝生もだいぶ疲れていますが、残り2試合。
まもなくサンフィレッチェ広島と広州恒大の3位決定戦のキックオフを迎えます。
是非、広島には勝って日本サッカーの力を世界に見せてもらいたいものです。
さぁ、2015年、我々の作った芝生の集大成の始まりです。
芝生観察日記の第七十話です。
平成27年12月17日(木)
10日に開幕した「FIFAクラブワールドカップジャパン2015」も昨夜、大阪の長居スタジアムで準決勝戦1試合目(M5)、南米代表リバープレート対開催国枠として参加しているサンフレッチェ広島の白熱した試合が開催されました。残念ながら広島は惜敗し、20日に日産スタジアム(今大会の標記は横浜国際総合競技場です。以下/日産スタジアム)で行なわれる3位決定戦に回ることとなりました。
さて、大阪で試合が行なわれている同じ時間帯、ここ横浜では今日の準決勝戦2試合目(M6)で対決するアジア代表の広州恒大と欧州代表FCバルセロナの公式練習が行われました。
公式練習は各チーム原則1時間と決められています。しかし、短時間で狭い範囲での練習を繰り返すため芝生の傷む度合いは試合以上です。
傷んだ箇所は、決戦に備えて夜明けとともに、管理スタッフがフィールドの隅々まで念入りに補修作業を実施します。
芝生管理スタッフには毎回スタッフジャンパーが支給されます。今回は黒。シンプルで評判が良いみたいです。
スタジアム内は、今日の一戦に向けて早朝から着々と準備が進んでいます。
FIFAの公式大会はフィールドの仕様に関して細かく指示が出されます。我々に一番関係してくることは芝生の刈高です。これは地域、芝種、季節などによって限定はできないため、25㎜~30㎜の間で設定するようにと幅を持って定められています。
日産スタジアムでは、今回25㎜で刈高を統一しました。今日の試合に向けて、フィールド整備に与えられた時間は凡そ5時間程度です。霜や露の状況によって大きく作業時間に影響するため、この時季の管理作業は難しいものがあります。そのため管理スタッフの増員の他、試合に影響する芝生の刈込みも通常は芝刈り機2台で刈るところを、4台で刈って時間の短縮を図ります。
芝刈り機4台が並走して刈る光景は壮観です。滅多に見る光景ではないので我々も新鮮な気分であると共に、いつもと違う緊張感を持って決戦の舞台を整備中です。
20日の決勝戦に進出するのは果たして広州か、バルセロナか、お楽しみに。
芝生観察日記の第六十九話です。
平成27年12月10日(木)
8ヶ月ぶりの更新となりました。
慌しく、そして粛々と今年のJリーグは幕を閉じ、残念ながら我らがF・マリノスは総合7位という結果に終わりました。揃って年末に横浜アリーナで開催されるJリーグアウォーズでW受賞という夢は今年も叶いませんでした。
もっとも今年のJリーグアウォーズは、どうやら東京で開催されるそうです。横浜尽くしの年末は来年の楽しみとして持ち越しましょう。
さて、日産スタジアムでは今日から3年ぶりに日本で開催される「FIFAクラブワールドカップジャパン2015」が開幕します。
今朝の最低気温は2.8℃。綺麗な陽光がスタジアムに差し込みましたが、予想通りの冷え込みとなり、昨夜の公式練習後に設置した保温用のシートが効果を発揮しました。大事な試合の前に霜にあたってしまうと暖地型の芝生の退色が進んでしまいフィールドの緑度が低下するので大変ですが、毎日シートの設置、撤去を繰り返します。
この大会期間中は、いつも夜が遅く、朝が早いため芝生管理スタッフには苦労を掛けますが、世界が注目する大会なので気が抜けません。スタッフの皆さんには感謝です。
会場の準備も着々と進んでいます。FIFAのバナーを見るといつもとは違った緊張感に包まれます。FIFAの大会では、GC(ゼネラルコーディネーター)という役職の人が試合会場の全てをマネージメントします。Jリーグなどではマッチコミッショナーと呼ばれるポジションです。
GCは、試合会場全ての決定権を担います。そのため、チェックも細かく、広くにわたります。
上の写真は、ゴールの高さをメジャーで実測している状況です。なかなかJリーグでは見ない光景です。また、もう一枚の写真は、ゴールの立て直しチェックの状況です。
FIFAの大会では、必ず試合で使用しているゴールの他に、例えば試合中にゴールが倒れたり、ネットが切れるといったアクシデントが起きた場合に、直ぐにゴールを立て直して試合を再開させられるように準備しています。そして、実際に何分でゴールを交換できるのかというシュミレーションチェックを受けている状況です。今回は15分21秒で完了し、GCから「Verygood」の評価をいただきました。これもJリーグでは考えられないことですが、世界一を決める大会ですから何が起きるか判りません。実際に2005年の本大会においてサポーターが乱入してゴールネットを吊るサブポールが曲がってしまい、試合中にゴールを交換するという事態を経験しています。リアルに体験しているので戸惑うことなく対応できました。
そして、今朝は12月の試合としては初めて早朝散水を行いました。この時季の散水は凍結する恐れがあったりするので我々の判断では行うことはありません。ここでも、GCの権威が威力を発揮します。昨夜の公式練習前にミーティングを行い、FIFAのマニュアルでは、試合当日の散水時間を6時間前、3時間前、2時間前、1時間前、30分前の5回と決められているというのですが、これは日本の気候や試合当日の慌しいスケジュール感では現実的ではありません。交渉の結果、早朝と試合1時間前で決着しました。
これまでFIFAの大会で4人のGCと仕事をしてきましたが、今回のTomは手強そうです。大会は20日まで続きます。来週にはバルセロナFCも登場します。緊張感と共に刺激的な10日間が始まります。試合後の結果は追って報告します。