芝生観察日記の第百二十六話です。
令和四年7月8日(金)
久しぶりの更新となります。芝生観察日記を楽しみにされている皆さまお待たせしました。
前回3月の観察日記では、例年より遅れてティフトンの萌芽を確認したと記しています。
それから今日に至るまでのトランジション状況について報告します。
一昨日Jリーグを開催し、現在は刈高10㎜で刈っています。途中8㎜まで下げてライグラスにストレスを掛ける時期もありました。その他、バーチカルカットやコアリングなど例年通りのトランジション作業を実施してきました。
写真は、昨日のスタジアム全景です。ゼブラ模様も綺麗で特に問題なさそうです。
写真は、フィールド面の現状ですが、緑の濃淡が分かるでしょうか。淡い黄緑がティフトン、濃い緑がライグラスになります。右側の接写を見ると分かり易いと思います。
現在の芝種の割合ですが、7~8割がティフトンで、残り2~3割がライグラスといった状況です。とはいえ、ライグラスが暑さやストレスで枯れても直ぐにティフトンで埋まる訳ではないので、写真では分かり辛いですが1割程度の裸地(砂が露出した状態)があります。
また、芝種の割合はあくまでも目安で、全体を見廻した時の平均値になります。日産スタジアムを始めとする屋根付きスタジアムは、例外なく太陽の日照に制限があります。スタジアムの向きが東西南北それぞれスタジアムによって違いはありますが、日照時間の差が芝生に影響を与えています。
スタジアムによっては、日照時間を補うためにグローライトやLEDライトで補光していますが、日産スタジアムには用意されていません。
そのため、日産スタジアムではホーム側よりもアウェイ側、バックスタンド側よりもメインスタンド側の方が生育に支障が出ています。特に、日照を好む夏芝のティフトンは影響が顕著に表れます。
上の写真は、ホーム側ゴール前(左)とアウェイ側ゴール前(右)を対比しています。試合の翌日ということもありますが、明らかにアウェイ側ゴール前の方が、芝生が薄く、荒れていることが分かります。
しかし、環境によって生じる芝生の不具合がプレーにも支障を来して良いはずがありません。各スタジアムのグリーンキーパーは、試行錯誤しながらフィールド全体が均一になるよう努力しています。
最後に、一昨日のJリーグで生じたスパイクの傷です。トランジションの過程では、ライグラスの根が衰退して消失し、ティフトンも表面に出た芽が新たな匍匐茎を伸ばして絡み合って初めて丈夫なティフトンのターフが出来上がるので、現状はまだ道半ばです。
今年は、5月、6月とコンサートが続きました。特に6月は、梅雨というのも影響して曇りの日が多く、日照不足によりコンサート後のダメージ回復に苦慮しました。それでも、観測史上初となる早期の梅雨明けや猛暑日続きが幸いしてトランジションの遅れを取り戻しています。
しかし、来週末には今年3回目のコンサートが予定されており、トランジションは再び停滞すると思いますが、過去の経験上、日産スタジアムのトランジション完了は8月中下旬なので、まだ時間は十分あります。
天気の安定を願うばかりです。
観察日 : 2022年 6月28日(火)
場 所 : 大池付近、水路付近
生きもの: ニイニイゼミ、アオスジアゲハ、チョウトンボ、ヤブキリ
ヘイケボタル
記事作成: 阿部裕治(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)
6月終盤、連日の猛暑。1日の中でも気温がピークになるお昼すぎからの観察になってしまい、熱中症対策で濡らし手ぬぐいを首にまいて挑みました。風が吹くと暑さが少しやわらぎますが、止んだ途端、モワッとした暑さと強烈な日差しが襲ってきます。
先月、アオスジアゲハの幼虫を確認した投てき場そばのクスノキ。幼虫や蛹(サナギ)がいるか探していると、後ろの方から「チーーーー」という鳴き声が聞こえてきました。久しぶりの声にすぐに名前が出ず。約1年ぶりのニイニイゼミです。今年は羽化が早いのかと思いましたが、例年6月下旬に聞いているので、セミは普段通り。どうやら、私の感覚が季節に追いついていないようです。鳴き声が聞こえてくるシダレヤナギに向かい、双眼鏡も使ってじっくり探しますが見つからない。暑さに根負けし、今年初のニイニイゼミをカメラに収めることはできませんでした。
最初に探していたアオスジアゲハは、小さな幼虫を4匹確認。5月に続いて新たな生命が生まれていました。水際突堤近くのソメイヨシノの樹上に、ひらひら飛ぶ黒いトンボ。チョウトンボも今年初確認でした。
ニイニイゼミの鳴き声が聞こえてきたシダレヤナギ
5月に続いて、アオスジアゲハの命が誕生していました。
飛翔するチョウトンボ
6月に入った頃から、園内を歩いていると、「シュルルルルルル...」という大きな鳴き声を耳にするようになりました。その昆虫、下の写真のどこかに隠れていますので、探してみてください。
どこにいるでしょう?
写真の中心から右下の角に向かって視線を動かしていくと、もう分かりましたね。正体は、キリギリスの仲間、ヤブキリです。食性は肉食の傾向が強いようです。観察会でバナナトラップを仕掛けていると、すぐそばにいることがよくあります。集まってくる昆虫を狙っているのでしょう。
正解はここ ヤブキリ(別日撮影)
【ヘイケボタル情報】
今年は、ヘイケボタルの終齢幼虫を5月18日に400頭、5月23日に250頭を水路に放流しました。例年よりも羽化が遅く、6月23日に5頭確認することができました。今後の羽化状況にもよりますが、7月上旬頃まで観察できるのではないかと思われます。6月28日の観察では、15頭確認できました。少ない数ではありますが、ホタルの光を楽しんでいただけると嬉しいです。(鶴見川流域に生息するヘイケボタルを飼育繁殖させ、放流しています。)
観察時期: 7月上旬頃まで
時 間 : 19時40分~21時頃
場 所 : 新横浜公園内の水路(下地図赤★)
※注意事項は、観察案内をご確認ください。
観察場所の風景
下の案内が柵に掲示してあるのが目印です。
観察案内
第3駐車場入り口前のロータリーガーデンでは、
背の高いルドベキア マキシマが咲きはじめ、
ダイナミックな景色になってきました。
色とりどりの花が咲き見ごろになっています。
そして、ボーダーガーデンでは、色とりどりの宿根草が花盛りです。
白いモナルダとエキナセア
こちらは、ピンクのモナルダとエキナセア
中央広場からスタジアムへ向かう道に沿った芝生の奥には
今月、新しいガーデンが誕生しました。
今まで季節ごとに一年草を植え替えていた場所を
宿根草や低木を使ったナチュラルガーデンに変える試みです。
マルチング材には、ダンボールと腐葉土などを使っています。
4月、パンジーが植えられていました。
5月、一年草を抜いた後、敷石で小径づくり
6月、ダンボールを敷きつめました。
6月9日
日産スタジアム運営ボランティア グリーン&クリーン部会の皆さんにお手伝いいただき苗を植え付けました。
最後に腐葉土でマルチング
良く見ると、もうウツボグサが咲いています。
今後が楽しみなガーデンです。
記事作成:貝瀬洋子(studio nazuna)
この度、新横浜公園ホームページにナチュラルガーデン特設ページを作りました!その名も「ナチュラルガーデンLabo」。
新横浜という地域や遊水地という特殊な環境でどんな植物が生き生きと育つのか、試行錯誤(実験)しながら増やしていくことをコンセプトに今後も発信していきたいと思います。
観察日 : 2022年 5月26日(木)
場 所 : 大池付近、水路付近
生きもの: アオスジアゲハ、カワセミ、クロイトトンボ
記事作成: 阿部裕治(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)
11時頃から観察をスタート。投てき場近くの大池に来ると蒸しっとした暑さ。近づいてくる夏を感じました。この時期になると、池底で芽生えたヒシが水面に葉を展開し、大分目立つようになるのですが、今年はあまり見られず。今後の様子が気になります。
200mほど移動し、クスノキをチェック。数年前にアオスジアゲハの幼虫を見つけてから、よくチェックしているのですが、確認したのはそれが最後。葉を少し食べたような跡があり、注意して探すとすぐに発見。幼虫がいたのは紅葉した葉の上でした。目立つ場所にいてくれて私にとってはラッキーでしたが、鳥などに見つかって食べられませんように。他にも幼虫がいるか探すと、2齢と思われる幼虫も見つかりました。この時期に紅葉?と思った人もいるかもしれません。クスノキは常緑樹で、春に新しい葉が出てくると、古い葉は紅葉して落下します。
今年はヒシがあまり出ていない。 昨年5月25日の様子
クスノキの葉についていたアオスジアゲハの幼虫
成虫(4月19日撮影)
ピィピィピィ、ピィ。水際突堤の先端近くに来たとき、鳴き声が聞こえました。その方向を双眼鏡で探すと、木の枝にカワセミが2羽とまっていました。雰囲気が普段とは違う様子。オスが深くお辞儀をすると、メスは頭を下げてから嘴を開き、上に伸びる動きを交互に行っていました。たまに鳴き、翼をパッと開くような行動も見られます。
今は繁殖期の真っただ中。この様な行動は、求愛の初期段階で、徐々に距離が縮まり、オスがメスへ餌をプレゼントする行動に発展していくようです。うまく結ばれると良いですね。
お辞儀をしあうカワセミ(左:オス、右:メス)
修景池のトンボは産卵中。最初、目にしたのはコシアキトンボで、自分の縄張りを往復して飛んでいる様子。観察していると、近くの水面付近で動くものに気付き、目を凝らすとクロイトトンボでした。目がイトトンボの焦点になると、どんどん見つかり、ペア3組、オス2匹の合計8匹がいました。イトトンボの仲間は、植物の組織内に産卵を行います。ペアは連結した状態で、水面にあるメタセコイアの葉やヒシに産卵していました。
これから暑さが厳しくなってきますので、熱中症に要注意です。水分をこまめにとりながら観察を行い、少しでも調子がおかしいなと感じたら、無理せず日陰で休憩するようにしましょう。
クロイトトンボの産卵(前:オス、後:メス)
2022年5月26日
新横浜公園では、水と緑豊かな自然環境を生かして未来を担う子どもたちに様々な環境教育や体験授業を開催しています。
今回は、「食」に対する感謝の気持ちや理解を深めて欲しいという我々公園スタッフの思いから始めた「食育体験授業」を開催しました。2014年に始めたこの授業ですが、ここ2年は新型コロナウイルスの影響で開催を見送ったため、3年ぶりの開催となりました。
横浜市では「食育推進計画」を策定し、食育に力を入れています。また、横浜市は大都市でありながら、実は農業が大変盛んな都市であり、教育の場でも地産地消を推進しています。
今回も、地元小机小学校の2年生3クラス全員が新横浜公園に来てくれました。
当日は、25度を超える夏日となり、子どもたちの熱中症が心配になるくらいの晴天でした。地元とはいえ、子どもたちは公園まで30分近い道のりを歩いてきたので、木陰で汗を拭いながらスタッフと朝の挨拶をして体験授業のスタートです。
今回の体験授業は、サツマイモの植え付けです。例年はサトイモも植えるのですが、今年は種芋が手に入らなかったためサツマイモだけとなりました。
まずは、スタッフから横浜野菜に関する話の後、サツマイモの苗の植え方について説明を行いました。
体験授業には、我々公園スタッフのほか、日産スタジアムの運営ボランティアの皆さんも協力してくれるのでご挨拶。
まずは、ボランティアさんから一人ずつ苗を手渡してもらいます。今回は一人、苗を2本ずつ植えてもらいます。初めて見る苗にやや緊張気味の子どもたちでした。
あらかじめ公園スタッフが作った畦の前でもう一度苗の植え方を確認しました。
苗が深くまで入るように先生方が作ってくれた割り箸に、苗を添えて恐る恐る公園スタッフやボランティアさんの指導を受けて植えていきます。
仕上がりはこんな感じ。上出来ですね。
最後に、みんなが持参したペットボトルでたっぷりと水やりをしました。元気に育ちますように。
最後は、みんなで集合写真を撮ってサツマイモの植え付け体験が終わりました。
小机小学校2年生のみなさんお疲れ様でした。また、作業に関わった公園スタッフやスタジアム運営ボランティアのみなさん、どうもありがとうございました。
次回は、夏に成長の具合を見て蔓返しと除草作業を行う予定です。新横浜公園にお越しの際には是非、小机小学校の皆さんが植えてくれたサツマイモの生育状況をご覧いただき、温かく見守っていただければと思います。